巻頭言
「シン・働き方」を読んで
岩手県立軽米病院 院長 葛西敏史
産婦人科医の稲葉可奈子先生の著書「シン・働き方」を読んでみた。今は「女性特有の健康課題」について注目が集まっており、月経関連症状による労働損失が4911億円、更年期症状による労働損失が4200億円、子宮頸がん・乳がんによる労働損失が2966億円という、合わせて1兆円ものの労働損失があるという報告があるのだという。
そんな時に1)女性は特有の健康問題による労働損失があるのだから、男性の方を雇いたい。2)性別による区別は良くないので、労働損失を生じるかもしれないが、女性も雇わなければならない。3)労働損失が生じるかもしれないが、組織の中には男性も女性もバランスよくいた方が、組織のダイバーシティが高まる。と、考え方はいろいろあるが、経営者の皆さんはどう考えますか?と投げかけています。
病院という我々の業界は、人数的には女性優位でしょう。しかし医師は依然として男性が多く、上下関係など、古い部分が残っています。
1980年代は専業主婦世帯数が共働き世帯の2倍でしたが、2023年には逆に共働き世帯数が専業主婦世帯の約2.5倍になっているんだとか。つまり我々の世代は「家庭のことは女性に任せて、男性は仕事に専念」というのが当たり前だったのが、今は専業主婦を探す方が難しくなっているようです。また、昔はセクハラもあまり問題にならず、パワハラという言葉も聞かなかった。ちょっと前にはどこかの大学では男性を優先して合格させて世間が紛糾しましたね。
もう認識を変えていかなければならないでしょう。世代間のギャップも大きい今こそ、女性や若者の問題を真正面から見なければならないのでしょう。以前に比べれば、男性も育休を取りやすくなっているが、上司は苦々しく思っている、なんていうのはダメでしょう。これが建前でなく、本音になるのにはもう少し時間がかかりそうですが。
ちなみに2023年度雇用均等基本調査によれば、2021.10.1?2022.9.30までの1年間に配偶者が出産した男性のうち、2023.10.1までに育児休業(産後パパ育休を含む)を開始したもの(育児休業の申し出をしたものを含む)の割合は30.1%と前年調査より13.0ポイント上昇。業種でみると、取得率1位は「生活関連サービス業・娯楽業」の55.3%、「医療・福祉」は9位で31.7%、16位は「不動産・物品賃貸業」で16.9%だった。