令和7年度岩手県医師会事業計画

昨年、世界では、ウクライナ情勢、新たなる戦禍、中国の動向、エネルギー価格の上昇やサプライチェーンの混乱などが経済に大きな影響を及ぼした。日本でも正月の能登半島地震を始めとして全国各地で自然災害に見舞われた。また国民の政治への不信が爆発した年でもあった。

医療界では、働き方改革を始め多くの現場での改革が本格的に開始された。オンライン資格確認、マイナンバーカードなどの情報技術の活用は、医療情報の一元化や管理の効率化、地域医療の質を向上させる事に役立つものであるが、普及率は低く、トラブルも発生している。さらに2021年に医薬品製造過程での規則違反に端を発した医薬品の出荷停止、調整などが続き安定供給が未だになされず、日常診療に多大な影響を与えている。新型コロナウイルス感染症は5類に移行してからも終息しておらず、常に感染対策を充実しながらの診療が強いられている。また国からのコロナ関連の補助金がなくなった事や社会的な物価高騰で、医療機関の多くは赤字経営になっており、医師少数、偏在の問題を抱える岩手県の医療は厳しい状況が続いている。

岩手県医師会は、今年度は特に災害支援派遣の充実のための連携強化、小児在宅診療体制の構築、少子化対策に力を入れていく事を目標として掲げる。災害支援は岩手JMATとしての派遣者の体制充実を構築する。小児在宅診療は小児科医不足を補う意味も含めてオンラインを利用した小児科以外の医師との協力体制を構築する。少子化対策は、岩手県の昨年の出生数は、団塊の世代の方々の1/8と予測されており、早期の対策が必要だが、全国的な問題であり生活基盤の要素も強く、行政の担う所も大きい。医師会としては、将来を見据えた観点から、幼少期、特に小学校入学前の子どもの健全な能力開花とプレコンセプションケアの啓発に努力する。以前から課題となっている事業については継続して取組んで行く。

岩手県医師会は県当局、関係団体、大学医師会、郡市医師会と連携を図り、強い使命感を維持して県民が幸福感を得られ、人を敬う心の通った社会を目指して、県民の医療・保健・福祉に貢献していくために以下の事業を行っていく。

1.新興感染症への対応

2.医の倫理の高揚

3.医療安全対策の推進と医療事故調査制度への対応

4.被災地医療支援、災害時医療活動の充実

5.国民皆保険の恒久的堅持

6.生涯学習の推進

7.医療政策への積極的取組

8.地域医療活動の充実

9.広報活動の活性化

10.適正な保険医療の推進

11.ACP(Advance Care Planning)の啓発と在宅医療支援

12.医療DX(デジタルトランスフォーメーション)・医療情報システムの充実への対応

13.医業承継・税制への対応

14.医療提供体制改革(地域医療構想・医師偏在対策・人材の確保育成・働き方改革)への対応

15.少子化・人口減少問題への対応

16.会員福祉の充実