令和6年度岩手県医師会事業計画
昨年、世界ではロシアのウクライナ侵攻が長期化し、戦争の終結が見えぬまま、中東ではハマスとイスラエルの戦火が勃発した。紛争は多くの犠牲を生み、人道上の深刻な危機にある当事国ばかりか、資源高騰による経済情勢の悪化など、多くの国々に影響を与えている。自然界では1年を通して異常気象が猛威を振い、洪水、メガ干ばつ、熱波、記憶に新しいところではハワイマウイ島の山火事などが各国で多くの被害をもたらした。日本でも記録的な真夏日、大雨が農作物に被害を及ぼし、以前からの物価高に更に拍車をかけるなど日常生活に影を落としている。そして本年、年始早々に能登半島地震が起き、広い範囲にわたって甚大な被害が生じた。全国で支援し災害応急対策が進められているが、今なお多くの方が厳しい避難生活を余儀なくされている。
医療界では2021年から発覚した製薬会社の品質不正を発端に、原料・原薬を輸入に頼っていた医薬品の産業構造などにより、医薬品の安定供給が困難な状況が続き、日常診療に影響を与えている。
昨年4月から原則義務化となった医療DXの基盤となるオンライン資格確認は、多くの医療機関が導入したにも関わらず、マイナンバーカードの健康保険証利用は政府の予測に遠く及んでいない状態である中、本年6月からは、訪問看護へも原則導入義務化され、12月には保険証が廃止される。様々な課題を抱えているが、日本医師会と連携し現場の声を提言し、安心・安全で質の高い医療の提供を目指していく。
また、本年度から開始される医師の働き方改革に関しては、岩手県の医療崩壊をきたさないために、派遣病院と密なる連携を構築して対応していかなければならない。
国では昨年、第8次医療計画における在宅医療の体制整備について、「積極的役割を担う医療機関」・「必要な連携を担う拠点」の設置を全都道府県に求めた。岩手県医師会では地域事情に合わせた医療体制の構築に行政、関係機関と連携を強化し取り組んでいく必要がある。
ACPに関しては昨年度同様に、医療・介護に従事する多職種の関係者と県民への啓発を続けていく。
少子化に対しては、出生数を増やすだけでなく将来を担う子どもたちの健全な育成に関して提言していく。さらに地域包括ケアシステムの構築をはじめ、フレイル予防、糖尿病性腎症重症化予防、産後ケアの充実、虐待防止、神経発達症児・医療的ケア児の支援体制整備の継続課題、昨年県に提言したプレコンセプションケアに関しても丁寧に対応していく所存である。
岩手県医師会は県当局、関係団体、大学医師会、郡市医師会と連携を図り、強い使命感を維持して県民が幸福感を得られ、人を敬う心の通った社会を目指して、県民の医療・保健・福祉に貢献していくために下記の事業を進めていく。
1.新型コロナウイルス感染症への対応
2.医の倫理の高揚
3.医療安全対策の推進と医療事故調査制度への対応
4.被災地医療支援、災害時医療活動の充実
5.国民皆保険の恒久的堅持
6.生涯学習の推進
7.医療政策への積極的取組
8.地域医療活動の充実
9.広報活動の活性化
10.適正な保険医療の推進
11.ACP(Advance Care Planning)の啓発と在宅医療支援
12.医療DX(デジタルトランスフォーメーション)・医療情報システムの充実への対応
13.医業承継・税制への対応
14.医療提供体制改革(地域医療構想・医師偏在対策・人材の確保育成・働き方改革)への対応
15. 少子化・人口減少問題への対応
16.会員福祉の充実