「こころ」と「ことば」 宮内婦人科・心療内科クリニック 宮内茂壽
私には、最近気になっていることがあります。それは「○○させていただく」という表現です。講演会では著名人(ちまたでいわれている人)が、「本日お話させていただく・・・」といい、タレントは「○○と共演させていただき・・・」と、それこそ舌を噛みそうな「させていただく」の連発です。
これら「させていただく」連発症候群の患者さんたちに共通することは、本人たちはへりくだったり、または丁寧なつもりでも、「させていただく」という表現は、気付かないうちに"こころ"が貧弱になっていると考えられます。
自分の意見をはっきりと述べず、あいまいさを残すということは、主体性はもちろん、自分の言動に自信を持てない表れであるとみることができます。なぜ、「本日お話することは・・・」「○○さんと共演して・・・」ではいけないのでしょうか。日常的に何気なく使っている"ことば"の基盤に存在する"こころ"、その言葉が示す意思こそ、もっとも大切なのではないでしょうか。
用い方によっては丁寧語がいい加減語や、他人を小馬鹿にするような言葉、さらには、自信のなさを示す証明にもなりかねません。