「こころ」と「ことば」〜その2〜  宮内婦人科心療内科クリニック 宮内茂壽 

今回は「〜したいと思います」についてお話します。
 よくいろいろな会合や集会などで司会者が「これから〜の会を始めたいと思います」とか「〜さんのお話を聞きたいと思います」、会合の終了時には「これで〜を閉じたいと思います」などと「〜したいと思います」症候群のオンパレードが見られます。なぜ「〜を始めます」とか「お話を聞きます」ではだめなのでしょうか。後段の表現方法の方がより簡明でありましょう。
 最近特にこの「〜したいと思います」を使う人が増えていることに気付きます。多少いじわるな見方をすれば、「〜を始めたいと思います」に対し、「思うだけでなく、早く始めろよ」とか「お話を聞きたいと思います」には「思うだけで、本当は聞きたくないのでは?」と考えることもできます。
 「〜したいと思います」という表現には、自分(自己)を一段低くして外部からの抵抗や批判をあらかじめ少なくしておこうという意識が作用している気がします。
 いまの世の中、何事にもはっきりと自分の意思、態度を表明せず、暖昧な部分を残しておく方が、自己責任を求められたとき、うまく立ち回れる余裕(一種の逃げ)があると考えているからでしょうか。