腹部超音波装置(おなかの聴診器) 藤巻胃腸科内科クリニック 藤巻英二
超音波は、患者さんに苦痛を与えず、さまざまな臓器の診断に利用されています。腹部でも「おなかの聴診器」と呼ばれ、内視鏡・X線装置と同等、またはそれ以上の役割りを果たしています。
「急性腹症(ふくしょう)」と呼ばれる重篤(じゅうとく)な腹痛を起こす病気の診断では、胆石症、急性すい炎、腸閉塞(ちょうへいそく)などの消化器疾患のほか、泌尿器(ひにょうき)科の尿路結石、婦人科の卵巣腫瘍茎捻転(しゅようけいねんてん)・子宮外妊娠、循環器科の腹部大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)などで重要な情報が得られ、適切な専門科に紹介するのに役立ちます。
条件・臓器にもよりますが、5〜10mm、またはそれ以下の腫瘍を描出することが可能で、肝臓・胆のう・すい臓・腎臓・膀胱(ぼうこう)・子宮・卵巣・前立腺などの臓器で、症状が出る前に発見することができます。このほか、黄だんが出た場合、肝炎によるものか、結石や腫瘍による胆汁のつまり(閉塞性黄だん)かを即座に診断できます。(この後の治療方針がまったく違うため、非常に有力な情報です)また、腹水の有無も、比較的少量から診断できます。
検診・ドックにも適していますが、超音波は空気に弱いため胃腸の早期診断には適していません。また、脂肪も超音波を減弱させるため、肥満体の人では診断困難になります。