本当は怖い心臓の風邪〜心筋炎〜 循環器科・内科 大平医院 大平和輝

心筋炎は心臓の筋肉(心筋)がウイルスや細菌、アレルギーなどによって急性の炎症を起こす病気です。多くはよくある「風邪ウイルス」によるものであり、はじめの症状も発熱、咳、頭痛、咽頭痛、倦怠感、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢などのいわゆる「風邪症状」です。その後に胸痛、息切れ、呼吸困難、むくみ、ふらつき、動悸、頻脈、不整脈、低血圧、失神などの心臓の症状が現れますが、普通の風邪と自己診断する場合も少なくありません。
 症状のほとんどない例もありますが、心不全や不整脈によって命を落とす場合もあり、心筋炎と診断された場合は入院治療が必要です。最重要型(劇症型心筋炎)では薬物治療が無効の場合が多く、そのような場合は人工心臓補助装置やペースメーカーなどの高度な治療のできる専門施設でないと救命できません。
 普通の総合感冒薬や解熱剤の成分である非ステロイド系抗炎症薬は、心筋炎の急性期に使用すると、心筋破壊を増悪させる可能性があるので使用してはいけません。
 「風邪症状」に前述の症状が加われば心筋炎を念頭に置き、自己判断で薬を服用せずに、すぐに心臓の専門医を受診することが肝要です。子どもや老人など抵抗力の弱い例ではなおさら注意が必要です。