危ない狭心症         循環器科・内科 大平医院    大平 和輝

 急性心筋梗塞症は、心臓に酸素や栄養を送る血管(冠動脈)が突然詰まり心筋が壊死に陥る病気です。一方、狭心症は、冠動脈の狭窄やけいれんなどで一時的に血流が低下し心筋が酸欠状態になる病気です。
 急性心筋梗塞症は急死することが最大の問題であり、その死亡率は30〜40%といわれています。種々の治療法の進歩によって入院死亡率は10%以下に低下していますが、死亡例の大半は発症後1〜2時間以内の病院に到着する前に集中しています。
 AED(自動体外式除細動器)を用いた心肺蘇生法の普及に伴い、救命例が多く報告されているものの、救命率はまだ低いのが現状であり、心筋梗塞を発症させないことが理想です。
 狭心症には心筋梗塞になり易い危ないタイプがあり、今までなかった胸痛が1〜2ヶ月以内に発症してきたもの、今まであった胸痛が徐々に悪化してきたものなどを不安定狭心症と呼びます。急性心筋梗塞症の50〜60%は不安定狭心症の時期を経て発症するといわれており、男性では30歳以上、女性では40歳以上の閉経後で、脂質異常症、高血圧症、糖尿病、喫煙、メタボリック症候群、遺伝などの冠危険因子や、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症などの既往症がある場合は、「胸痛が治まったから大丈夫」と様子をみることなく、すぐに病院を受診してください。
 専門病院で入院治療を行うことで、心筋梗塞の発症を予防できる可能性が高くなります。