当たり(脳卒中)を先送りする心掛け  元岩手労災病院脳神経外科 杉山浩隆


 1999年にアメリカ医師会雑誌に掲載された論文が、近ごろ邦訳されました。約37万人を対象に、動脈硬化の危険因子(RFと略す)を有する群(高RF群)と有しない群(低RF群)を比較研究した結果、両群間で総死亡率に大きな違いを生じ、平均余命として1958年〜98年の差が見積られたと述べています。
 すなわち、40歳代以降に想定されるおよそ30年の生活時間において、動脈硬化の進行具合に約6年〜10年分の差ができ上がる(RFを放置すれば、血管は約2割〜3割早いスピードで年をとる)と考えれば理解は容易です。
 このように、RFとは将来的に当たり(脳卒中)や心筋梗塞などを発病させる主要な原因であり、次のようなものが含まれています。@時間(加齢)A血圧B血糖(糖尿病)CコレステロールD不整脈(心房細動)E尿酸値F喫煙G肥満などです。@は神々の領域として別格ですが、A〜Eは本人にその気があれば医学的にほぼコントロール可能ですし、FとGも本人の心掛けしだいです。
 これらをコントロールすることは、結果的に当たり発病の先送り(最大で10年)につながるといえ、人生の有効な期間の増加かつ、不自由な期間(要介護状態など)の短縮という構図が期待可能ということになります