膀胱癌のワクチン療法について 小原クリニック 小原 紀彰
尿は左右の腎臓で作られ、左右それぞれの尿管という管を伝わって膀胱に溜まります。ある程度膀胱に溜まると尿意を催し、尿道を通って外に排泄します。
長い間残尿(膀胱から全部尿が出きらない状態)が続くと、膀胱結石や膀胱癌が発生しやすく、血尿という形で気がつきます。膀胱癌は初期のうちは内視鏡を用いた凝固や切除で済みますが、ある程度大きなものは、腹部を切開し、膀胱の部分切除をしなければなりません。そのうち約半数が再発し、うち10〜30%は進行した癌で、膀胱全摘が必要になる場合があります。
岩手医大では、ヒトゲノムを解析し、膀胱癌の細胞に高い確率で現れる遺伝子からワクチンを開発し、臨床試験を行っています。ワクチンを投与することで、患者自身のリンパ球を増やし、免疫力を高め、がん細胞だけを攻撃します。6例中3例でがんが小さくなる効果が認められました。膀胱癌の分野でのワクチン開発は世界初であり、一刻も早く一般に使用される日が待たれます。