男の病気−前立腺肥大症、前立腺がんについて 小原クリニック 小原紀彰
○前立腺肥大症について
早い人は50歳代より始まり、80歳以上になると2人に1人は前立腺肥大症になります(良性のものです)。
症状は初期から順に
1.尿が間に合わない(尿意切迫感)。トイレに行く回数が増える(特に夜間頻尿)。
2.尿が出にくく、時間がかかる(排尿困難)。
3.全部の尿が出きらない(残尿感がある)。
4.昼夜を問わず頻繁にトイレに行く。尿が漏れてしまう。
5.尿が詰まって出ない(尿閉)と進みます。
治療はお薬か、物理的に温める温熱療法と手術療法があります。
○前立腺がんについて
生活環境の欧米化により日本でも増加しており、前立腺がんによる死亡数は2,000年では6,000人、2,015年には13,500人となりがん死の第1位を占めると予想されます。前立腺がんは肥大症と違ってかなり大きくなるまで無症状です。特に前立腺がんは進行すると骨に転移しやすいのが特徴で骨痛が強くなり、歩けなくなったり、寝たきりになったりすることがあります。55歳以上の男性はがんの発生に注意しましょう。
そのためには健康診断を受け、
@ 血液検査(PSA)、
A 専門医による直腸内指診、
B 超音波診断法 をお勧めします。
(2000年11月号より)
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冬に多い皮脂欠乏性皮膚炎 小瀬川皮膚科医院 小瀬川 玄
冬になると高齢者のすねや腰回りの皮膚がかさかさして粉を吹いたようになったり、ひび割れたりします。皮膚が乾燥するとかゆみを感じやすくなり、かきむしり湿疹ができます。これが皮脂欠乏性皮膚炎です。冷たい風が吹き始める十月ころに始まり、冬期にピークに達し三月ころまで続き、五十歳以上の男性に多くみられます。
原因は、皮膚の最外層にある角層の水分量の低下によります。角層の水分保有能に関与するのは皮脂腺、角質細胞間脂質、天然保質因子ですが、これらが加齢とともに減少するために皮膚が乾燥しやすくなります。また外気の乾燥、暖房機具による湿度の低下、気温低下にともなう発汗量の減少が悪化因子となります。
スキンケアとしては
@入浴時の洗い過ぎに注意し、せっけんは弱酸性のものを使用し、ナイロンタオルは避けましょう.そして重要なのは、入浴後すぐに保湿剤を塗ることです。
A加湿を忘れた過度の暖房に注意しましょう。
B電気毛布の使用はやめましよう。
C下着は木綿のものを着用しましょう。
とにかく皮膚が乾燥してきたら早めに専門医を受診し、適切な塗り薬を処方してもらいましょう。
(2000年12月号より)
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頭痛(頭やみ)の話 花巻厚生病院 副院長・脳神経外科 遠藤英雄
脳外科を受診する方の60〜70%が頭痛で来院します。症状は、@シクシクする、しめつけられる感じ、何かかぶったような感じなどの軽いものから、Aズキンズキン脈打つ感じやガンガンする痛み、さらにはB割れるような激痛、ハンマーで殴られたような強度の頭痛まで、程度はさまざまです。
@は肩こりや首の痛みとも相関し、筋肉や神経の緊張、刺激によるものです。生活環境を変えたり、運動、ストレス発散で十分ですが、長引くときには緊張をほぐす薬が有効です。
Aは通常、頭の外の血管(皮膚や筋肉の中を通る)が広がったり、縮んだりすることで起こる頭痛であり、専門医の診断と治療が必要です(特効薬もあります)。このタイプの頭痛は、昔から片頭痛、血管性頭痛などと呼ばれ、女性の場合は母親からの遺伝要因もあり、天候や季節、過労、ストレス、食事、嗜好品(チョコレート、タバコ)など種々の要因も重要です。原因除去が一番の対策ですが、早めの薬の投与が大切です。
Bはクモ膜下出血や脳動脈瘤(りゅう)、脳出血など脳の血管に重大な病気がありますので、至急専門医を受診してください。緊急治療が必要です。
@、Aもときに脳腫瘍など重大な病気が潜んでいることもあるので、長期化したときは専門医へどうぞ。
(2001年1月号より)
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インフルエンザについて 大沼小児科医院 大沼一夫
インフルエンザはA型香港、A型ソ連、B型の三種が主なウイルスです。どの型も高熱が1-4日持続し、筋肉、関節痛と全身倦怠感が強いのが特徴です。一般に高齢者や心不全、慢性気管支炎、ぜん息、糖尿病、腎不全などの基礎疾患を持っている人は、インフルエンザで亡くなる割合が高く要注意です。
予防にはインフルエンザワクチンが一番で、子どもは1-4週あけて二回、大人は特に六十五歳以上の人は一回で効果があります。治療はA型インフルエンザにはアマンタジンが有効、A型、B型両方に効くザナミビル(吸入剤)、オセルタミビルがあります。
いずれも、発症から四十八時間以内に投与すれば有効性を発揮します。子どものインフルエンザでは脳炎、脳症の発症が問題になりますが、発症した場合、解熱剤のジクロフェナクナトリウム(ボルタレンなど)は致命率が有意差をもって高くなっています。
メフェナム酸(ポンタール)ははっきりしませんが、慎重投与が望ましいです。アスピリン(小児用バファリン、サリチゾンなど)はインフルエンザ、水痘に使用するとライ症候群(脳炎、脳症)の原因といわれていますので、15歳以下には使用しない方が望ましいです。アセトアミノフェンが安全です。
(2001年2月号より)
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観便のすすめ 藤巻胃腸科内科クリニック 藤巻英二
(注…お食事前には読まないように!!)
お腹の調子の悪い方に「便の色は?」と聞いても、案外、無頓着な人が多いようです。水洗トイレでないので分からないという方もいますが、もちろん拭き取ったものを確認すれば良いのです。
○タール便…胃から十二指腸の出血:ほとんどが潰瘍(かいよう)。
○新鮮血便…大腸下部から肛門の出血。
○暗赤色便…大腸深部(口側)の出血。
○白色便…胆汁の通り道が詰まっているか、肝臓の障害。
※イカスミ、造血剤などの薬、バリウムなども、便の色に影響を与えます。
潰瘍からの出血は、緊急内視鏡(カメラ)検査で内視鏡を通して治療ができるようになり、手術することはほとんどなくなりました。大出血では命取りになることがありますので、出来るだけ早く専門医を受診しましょう。
血性の下痢は、O-157に限らずいろいろな大腸炎で起こりますので、便の細菌検査などの精密検査が必要です。排便後の出血は痔(じ)のことが多いのですが、直腸がんのこともありますので、一度は確認の検査をしましょう。大腸がん検診では便のわずかな血の反応を検出するのですが、胃からの出血は変性で陽性に出にくい性質を利用しています。
観便は簡便な自己診断法です。汚いと言わずに実行しましょう。
(2001年3月号より)
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尿糖陽性は糖尿病? 総合花巻病院 第三内科 高田恵一
みなさんは一年に一度、健康診断を受けているでしょうか。慢性腎不全では最終的に透析治療に移行するわけですが、その原因として二年前ついに糖尿病性腎症が第一位となり、特に糖尿病の初期治療の重要性がいわれています。
そこで今回は、尿糖について書きたいと思います。尿糖陽性になると即、糖尿病と勘違いされがちですが実はそうではないのです。というのは、腎臓という臓器は糖の再吸収能力が決まっており、ある一定以上の糖分は体外に排泄してしまうのです。(さらに詳述すれば、糸球体の中に近位尿細管の刷子縁膜という場所があり、ここでナトリウムイオンの電気勾配を利用してブドウ糖が濃度勾配に逆らって輸送、再吸収されるのです。)
一般的には血糖値で200mg/dlに近づいた場合、尿糖陽性になるといわれています。多くの場合、食事摂取後に健診を受ける方が多いと思います。そのため、食事の影響を受ける場合も少なくはないのです。
とはいえ、糖尿病を否定する材料にはなりません。最終的に自分の体を守るのは自分自身ということをお忘れなく。以上の理由から尿糖再検が来たときは、朝食をとらずに医療機関を受診しましょう。
(2001年4月号より)
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緑内障のウソとホント 花巻中央眼科 高橋和博
みなさん、「緑内障」という病名をご存じですか?昨年、美智子妃の緑内障治療がマスコミに報道されて注目されたためか、「自覚症状がなく、失明する病気である」ことを心配して私の所にも多くの方が相談にいらっしゃいます。日本人の30人に1人は緑内障であると言われていますが、その割に病態についてはあまり知られていないようです。
そこで今回は、緑内障のウソとホントについてのお話です。
緑内障は、眼圧(眼球の弾力)が高く、血液の循環が悪いために眼の神経が傷害される病気で、進行するとその部分に一致して視野が狭くなります。患者さんは、眼圧の上昇や視野の変化に自分ではほとんど気づかず、集団検診や人間ドックで初めて指摘されて、眼科を受診します。
ここ数年の緑内障の診断、治療の進歩は目ざましく、最新のコンピューター視野計は初期変化を鋭敏に検出し、新しい薬も多数開発され、手術成績も向上しています。特殊な例を除けば進行が遅い疾患であり、自分にあった治療法を見つける時間的余裕は十分にあります。検診を受け、眼科専門医に早期診断されれば失明にいたる例はそう多くありません。
したがって、「自覚症状がない」=ホント、「失明する」=ウソ(発見が遅れるとホント)、となりますね。
(2001年5月号より)
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漢方の話あれこれ 宮内婦人科心療内科クリニック 宮内茂壽
みなさんは「漢方」と聞くと、何を連想しますか?@長い歴史がある中国のクスリ。A何か得体の知れない物が入っていて、飲みにくい。Bクスリの効き目がゆっくりで、長い間飲まないと治らない。C副作用はないみたいだ。などが代表的な答えではないでしょうか。@〜Cの答えはある意味では当たっていますが、同時にちょっと違っています。その理由を以下に述べましょう。
まず、長い歴史はその通りですが、何千年もの間、絶えず改良(進歩)が加えられ今日にいたっています。先人の知恵には敬服の限りです。クスリの成分は、植物(根、葉、茎など)が圧倒的に多いのですが、鉱物(石)、貝ガラ、動物(昆虫)などもあります。日本でも、熊の胆は有名ですね。
Bは病気によりけりで、服用直後(5〜10分)に症状のとれるものもあります。
Cは極めて微妙な答えです。漢方薬は原則として患者さんの体質と病気の背景、そして病気そのものについて漢方学的診察を行い決定します。証とか気・血・水とか言うものです。したがって、頭痛一つとっても西洋薬では痛み止めが主になるのに対し、漢方薬では何十種類も薬剤があります。こが漢方処方の難しさであり、醍醐味でもあります。結論として正しい手順をふめば、副作用は西洋薬と比ベて少ない(ゼロではない)と言えます。
(2001年6月号より)
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ほくろ 三浦医院 三浦良雄
「ほくろ」は出生時には存在しません。生まれた後、だいたい3〜4歳ころから出始め増えていき、そして、少しずつ大きく成長していきます。人には普通、30〜40個のほくろがあると言われています。ほとんどのほくろは、一生放置しておいてもガンになる心配はありません。
ただ、注意しなければいけないほくろもあります。例えば、手のひらや足底部(特に末梢の三分の一)。それからベルトでこすれる腰、ブラジャーのストラップのあたる肩など、常に刺激が加わる皮膚の場所のほくろです。
こういうところのほくろは、まれに悪性化して皮膚ガンになることがあります。これは「悪性黒色腫」といわれ、皮膚ガンの中でも最も悪性度が高く危険なガンです。特に次のような変化があったときに疑われます。@急に大きくなった。A色が濃くなった。B周りに飛び火したような黒い点々ができた。C出血するようになった。などです。
最後は医師が判断を下さなければなりませんが、なかなか判断がつかない場合も多くあります。疑わしければ手術をして取ったものを病理学者に調べてもらわなくてはいけません。その他の部位の丸く盛り上がっている、あんこをつけたようなほくろの悪性化はむしろまれで、かえって平らな茶褐色のものの方がガンになりやすいとされています。どうです、もう一度ほくろを良く見てみませんか?
(2001年7月号より)
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ツツガムシ病について 湯本診療所 佐藤全紀
「ツツガムシ病」は、ツツガムシというダニの一種の幼虫に刺咬(しこう)されることにより、リケッチアツツガムシという病原体に感染し発病する病気です。古くから東北地方、特に日本海沿岸の河川の流域で、主に夏期に発生することが知られていました。1980年ころからリケッチアを媒介するツツガムシの種類が、以前と異なるものが流行するようになり、北海道と沖縄を除く各地で発生するようになりました。
発生時期は秋から初冬にかけてが多いのですが、前述のような理由で東北地方では春から初冬にかけても流行する時期があります。ツツガムシに刺咬されてから5-14日ほどで発症し、症状としては高熱と頭痛、全身けん怠感などで躯幹(くかん)や顔面に紅斑も出現します。
刺し口は直径10mmほどの黒褐色の潰瘍(かいよう)を形成し、かなり特徴的ですが、そ径部、陰部、腋窩部(えきかぶ)など発見しにくい部位にあることが少なくありません。
治療には、テトラサイクリン系抗菌薬などが有効ですが、発症後7日以上経過すると重症化する傾向があります。
多発時期に、林や草むらへ入った後はなるべく早く入浴し、脱いだ衣服は室内に放置しないなどの対策も重要ですが、怪しい症状があった時は早期に医療機関を受診することが望まれます。
(2001年8月号より)
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白い肝臓のお話 前岩手医大附属花巻温泉病院 内科 加藤博巳
肝臓を超音波検査で診ますと、正常では黒く写りますが、白く写る方が最近増えています。原因は、肝臓に脂肪が蓄積しているからです。脂肪の量が多ければ多いほど白く写り、なかには真っ白で肝臓の中が何もみえない方もいます。
肝臓に脂肪が蓄積する原因の多くは、栄養やアルコールの取り過きです。日常生活で使われなかった余分な栄養は、肝臓で脂肪に作り変えられて、体中の脂肪組織などにたまります。また、飲酒量が多い場合(1日に日本酒を3合以上、ピールを大ビンで3本以上、ウイスキーや焼酎の濃いめの水割り3杯以上を休まず毎日)には、アルコール性肝障害の一つの病気として肝臓に脂肪がたまります。
肝臓があまり白くなく、血液検査でも異常のない方は、体重を増やさないようにするだけで心配いりません。肝臓がかなり白い方は、血液検査で中性脂肪値や血糖値などが高い場合があり、動脈硬化症や糖尿病などの成人病を引き起こす可能性があります。
対策としては、食事量を少し減らして、散歩などの軽い運動を少し長めに行うことが必要です。アルコールの多い方は、このままですとアルコール性肝障害が進み、アルコール性肝硬変になる可能性があります。飲酒量を減らすことと、飲まない日を週に1回は作ることが必要です。
(2001年9月号より)
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胸痛を自覚したときには 大平医院 大平和輝
胸痛は、心臓、肺、大動脈、食道、胃、胆のう、すい臓、胸部の筋肉や骨、神経、精神的なものなど、さまざまな原因で起こります。そのなかには、急性心筋梗塞症、解離性大動脈瘤など、迅速に診断し治療を開始しないと命にかかわる病気も含まれます。
特に冷や汗をともなうような激しい痛みが持続するときは、できるだけ早く救急車で専門病院を受診してください。自分で車を運転してくるようなことは危険ですから、絶対に避けてください。比較的軽い胸痛でも、持続する場合は同様です。また、症状がなくなっても重篤な疾患の前触れである場合もあり、大したことはないと自己判断しないでください。
病院を受診するときには、@どのような痛みか(締めつけられる、圧迫される、張り裂ける、針で刺されるなど)。A痛む場所はどこか。B痛みは移動するか。C痛みは左腕や喉などに放散するか。Dいつから始まったか。Eどんなときに起こったか。Fどれくらい続くか。Gどれくらいのひん度で起こるか。Hその場所を押すと痛むか。I体位で痛みは変化するか。などを前もってメモしておき、医師に話しましょう。診察する上でたいへん参考になります。
(2001年10月号より)
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当たり(脳卒中)を先送りする心掛け 元岩手労災病院脳神経外科 杉山浩隆
1999年にアメリカ医師会雑誌に掲載された論文が、近ごろ邦訳されました。約37万人を対象に、動脈硬化の危険因子(RFと略す)を有する群(高RF群)と有しない群(低RF群)を比較研究した結果、両群間で総死亡率に大きな違いを生じ、平均余命として1958年〜98年の差が見積られたと述べています。
すなわち、40歳代以降に想定されるおよそ30年の生活時間において、動脈硬化の進行具合に約6年〜10年分の差ができ上がる(RFを放置すれば、血管は約2割〜3割早いスピードで年をとる)と考えれば理解は容易です。
このように、RFとは将来的に当たり(脳卒中)や心筋梗塞などを発病させる主要な原因であり、次のようなものが含まれています。@時間(加齢)A血圧B血糖(糖尿病)CコレステロールD不整脈(心房細動)E尿酸値F喫煙G肥満などです。@は神々の領域として別格ですが、A〜Eは本人にその気があれば医学的にほぼコントロール可能ですし、FとGも本人の心掛けしだいです。
これらをコントロールすることは、結果的に当たり発病の先送り(最大で10年)につながるといえ、人生の有効な期間の増加かつ、不自由な期間(要介護状態など)の短縮という構図が期待可能ということになります。
(2001年11月号より)
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お酒の話 中舘内科クリニック 中舘一郎
年末から年始にかけて、どうしても顔を出してくる『お酒』ですが、気にはしながらもついついということが多くはありませんか?お酒は上手に飲めば百薬の長、間違うと肝臓病、糖尿病、高脂血症などの重大な危険因子となります。お酒のことを良く知って、おいしく、楽しく飲むことが大切です。
適度なお酒は心身をくつろがせ、またコミュニケーションを円滑にしてくれます。適量のお酒は人生の良きパートナーとなるものです。しかし、このように楽しいはずのお酒で、悪酔いや急性アルコール中毒を起こしては何にもなりません。楽しくお酒と付き合っていくためには、「適度な酒量」を、「自分のペース」で、「味わいながら」飲むことが大切です。また、お酒に弱い体質の人への無理強いは危険。絶対に慎むべきです。
---適正飲酒10カ条---
@ 笑いながらともに楽しく飲もう
A 自分のペースでゆっくりと
B 食べながら飲む習慣を
C 自分の適量にとどめよう
D 週に2日は休肝日を
E 人に酒の無理強いをしない
F 薬と一緒には飲まない(睡眠剤、安定剤、糖尿病薬など)
G 強いアルコール飲料は薄めて
H 遅くとも夜12時までに
I 肝臓などの定期検査を
(かかりつけ医を持ちましょう)
(2001年12月号より)
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老人の物忘れ ゆうきクリニック 小木田勇輝
老人の物忘れ(記憶障害)は、良性と悪性に分類されます。
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良性
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悪性
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病的有無
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加齢による |
病的 |
障害内容
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記銘力低下・一部想起障害 |
記憶全体の障害 |
病識
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物忘れの自覚有り |
物忘れの自覚なし |
見当識
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日時・場所はわかる |
日時・場所がわからない |
作話
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ない |
ある |
生活
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日常生活に支障がない |
日常生活に支障がある |
学習
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学習能力はある |
学習能力がない |
進行
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徐々に進行 |
進行が速い |
表を見てわかるように、老人の物忘れは一概には痴ほう(ぼけ)といい切れないのです。高齢者の物忘れの大半は加齢によるもので、病的なものは5%未満です。その病的なものは脳変性疾患、血管障害、頭がい内占拠性疾患、外傷、感染症、中毒性障害、代謝障害、内分泌障害、酸素欠乏性痴ほう、ビタミン欠乏性疾患、またはてんかんなどが考えられています。その診断手順としては、家族からの病歴聴取、患者本人の診察(神経学的診察)と簡単な心理検査や臨床検査(血液検査、尿検査、心電図、頭部CTなど)です。
予防としては具体的に、潜在的疾患の進行防止、早期発見・早期治療・リハビリテーション、疾患の進行が難しいものは日常生活の適応を図ることなどです。
(2002年1月号より)
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糖尿病は恐ろしい病気 佐藤医院 佐藤彰孝
糖尿病は、すい臓で作られるインスリンというホルモンの不足や働きが不十分なために、血液の中のブドウ糖をエネルギーに変えたり、肝臓や筋肉に蓄えたりできなくなって起きる病気です。この利用されないブドウ糖を多く含んだベタベタした血液が、身体中をまわって全身の血管や末梢神経に障害を起こします。糖尿病の恐ろしさは、全身の合併症にあります。
糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害を「糖尿病の三大合併症」と呼んでいますが、さらに進むと、細い血管だけでなく太い血管も侵され、下肢の閉塞(へいそく)性動脈硬化症や心筋梗塞(こうそく)、脳梗塞を起こすこともあります。
しかし、糖尿病であっても正しく治療を行えば健康な人とまったく変わらない社会生活を送ることができ、また寿命に影響することもありません。
治療の目的は合併症を防ぐこと、合併症がすでにある場合は進行を抑えることですが、他の病気と同様、早期発見・早期治療が最も望ましいことはいうまでもありません。
(2002年2月号より)
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心の健康 阿部内科医院 阿部 満
今回は、誰もが関心のある健康について書いてみます。
健康は「体の健康」と「心の健康」に大別されます。体の健康の指標になるのは快食、快便、快眠です。いわゆるなんでもおいしく食べることができて、朝の排便もスッキリ出て、夜はぐっすり眠れて朝から体が軽いという状態であれば、体の健康は保たれていると判断されます。それに対し、心の健康は快笑です。一日一回でも心の底から大笑いすることがあれば、その日一日を幸せな気持ちで過ごすことができますから、心の健康は保たれていると判断されます。
心を持った肉体である人間は、心と肉体を分離して考えることは不可能です。例えば、熟睡できない翌日はごはんもおいしくないし便通も不良、さらには、日常的な周囲の出来事を余裕を持って楽しむことも考えられません。
さて、一日が終わったとき、今日一日をセルフチェックしてみましょう。ニヤ笑いするようなこともまったくない日が続くようなら、心は結構、傷んでいるかも。ストレス解消にはジョギングや好きなスポーツで汗を流しましょう。
花巻には近所に、泉質の異なった多くの温泉がありますから、渡り歩くのも良いでしょう。ただし、自覚症状のない病気が体に潜んでいることもあるので、年に一度の健康診断は忘れずに!。
(2002年3月号より)
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骨粗鬆症は怖くない 岩手医大附属花巻温泉病院 院長・整形外科 猪又義男
骨粗鬆症(コツソショウショウ)は紀元前3世紀の人にすでに認められている古くからある病気である。一語で定義すれば骨量の減少である。骨は体重を支え、これを動かし、運ぶという運動器の軸としての働きを持つが、骨が脆弱化し本来の働きを十分に行う事ができなくなったものだけをいう。粗は文字どおり「粗い」で、鬆は松葉のように1本1本離れているという意味であるが読み方が人によって異なり、「コツソソウショウ」とも読む。中国では骨疎松症と書く。本疾患の代表的な重大な症状は背や腰の骨の脊椎圧迫骨折、股関節部の大腿骨頚部骨折、肩の部分の上腕骨頚部骨折、手首部の手関節骨折である。これらの発生を防ぐためには予防が最善の治療であろう。予防の重点は子供のときから強い骨を作り、十分なカルシウムの摂取と適度な運動、日光にあたり、喫煙、過度の飲酒を避ける事が重要である。寝たきり老人を作る恐ろしい病気であるが、癌のように悪性の病気ではなく治療法はたくさんあり、糖尿病や高血圧のように病気の勢いを抑えコントロールすることによって、まったく健康で元気に過ごすことができるということを認識し、病気との息の長い付き合いをしていくことが必要である。
(2002年4月号より)
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もっと分かってもらいたい「痔じ」の話 元岩手労災病院 外科部長 佐々木盛光
三人に一人は「持主(じぬし)」ともいわれるほど、痔に悩んでいる人はたくさんいます。「痔」は肛門周辺の病気の総称で、@痔核(いぼ痔)、A裂肛(きれ痔)、B痔ろう(あな痔)の三つに大別され、それぞれの原因や症状、治療法も異なっています。
この中で最も多いのが痔核で、痔全体の約半数以上を占めます。次いで裂肛、痔ろうの順ですが、合併している人もいます。持主が注意すべきことは便に血が混じった場合、大腸がんの可能性も考えられるので、痔の出血と勝手に思わずに主治医(かかりつけ医)や大腸肛門専門医に相談しましょう。
「痔はイヤだが手術はもっとイヤ」-。痔で病院に行くとすぐ手術をされるのではないかと思いがちですが、多くの場合は手術の必要はなく、生活習慣の改善だけでよくなります。痔ろうだけは”がん”になる可能性があるので手術を考えますが、その他の痔はセルフケアだけで良くなることがほとんどです。手術が必要な方は全体の二割程度にすぎません。
しかし、手術やクスリで良くなっても以前ど同じ不摂生をしていれば、再発しやすくなります。痔は生活習慣病と考え、自(痔)覚することが大切です。切らずに乗り切るためにはセルフケア、自己管理で「痔エンド」です。
(2002年5月号より)
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「突発性難聴」 小原耳鼻咽喉科医院 小原能和
ある日突然、思い当たることもないのに、片方の耳が聞こえなくなる病気です。
難聴以外にも症状はさまざまで、山に登ったときやトンネルに入ったときなどに感じる耳の閉塞感、耳鳴りで発症したり、めまいをともなうこともあります。
鼓膜は正常で、レントゲンでも異常が発見されない「内耳」と呼ばれる聴こえの神経の障害であることは解っていますが、原因は不明です。
内耳の障害は「老人性難聴」をはじめ、治療困難な病気が多いのですが、「早期に治療を開始したものほど改善率が高い」ということが突発性難聴の特徴です。早ければ早いほど改善率は高く、発症から二週間以上経過すると改善率は格段に低下してしまいます。
治療は、難聴が高度の場合には入院治療が必要なこともありますが、多くは、内服薬のほかに数日間の点滴治療が必要なこともあります。時間的な制約を受けますが通院治療が可能です。
「あれ、たいへんだ、でももう少し様子をみるか」が治せる病気を治せなくしてしまうことがあるので、異常を感じた場合は早期に診てもらうことが大切です。
(2002年6月号より)
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「C型肝炎ウイルス陽性」その時は・・・ 熊谷内科胃腸科医院 熊谷和久
平成14年度から、健康診断に「C型肝炎ウイルス(HCV)」の検診が追加されることになりました。以前より、胃カメラ受診時やドックの一部ではHCV判定は行われていましたが、今回はもう一歩踏み込んで、HCVが体内に持続感染しているかどうかまで判定することになりました。
わが国では、HCVの持続感染者(キャリア)は全人口の1〜2%いるといわれています。一方HCVは、慢性肝炎、肝硬変、肝がんにおける病院の約70%を占めています。キャリアにも、肝機能が正常な「無症候性キャリア」と肝機能障害を有する「症候性キャリア」が存在しており、現在、無症候性キャリアであっても、その後症候性キャリアに移行する場合もあります。
また、HCVによる肝炎では、他の肝炎より肝細胞の壊死炎症反応が軽度であるため、たとえ慢性肝炎を発症していても、1年に1回程度の肝機能検査のみでは早期発見が難しかったのです。
今年からの検診では、このHCVキャリアを早期発見する検査となりました。今まで、検診で肝機能異常を指摘されたことがなくとも、HCV陽性の判定が出た場合は上記のことを踏まえ、専門の医療機関を受診し、より詳しい検査(採血、画像診断)を受けることが大切です。
(2002年7月号より)
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災害医療「トリアージ」について 前花巻厚生病院 救急医療科長 真瀬智彦
「トリアージ」は災害医療を行う上で重要な言葉です。災害医療とは、一度に大量の傷病者が発生した時に行われる医療のことで、医療を施す側(医療機関)が施される側(傷病者)に比べ、人的、物的資源が圧倒的に少ないこと、限られた物資を最大限に活用し、より多くの傷病者を治療するというものです。その際に、傷病者の緊急度と重傷度から、治療の優先順位を決めることをトリアージと呼んでいます。
もし、花巻で大規模な地震が起きたり、花巻空港で飛行機事故が起きた場合など、一度に多くの傷病者が発生し、花巻市内の医療機関にはそれぞれの対応能力を超えた傷病者が搬送されます。この時にトリアージが行われ、傷病者の治療の優先順位を決めて治療が開始されます。
このような状況の時、みなさんには救急隊、医療機関で行われるトリアージを受け入れていただき、混乱をきたさないよう、ご協力をお願いしたいと思います。
私が勤務する岩手県立花巻厚生病院は、中部地区(花巻、北上医療圏)の災害拠点病院です。日ごろから災害に対応できるよう準備、訓練をしています。みなさんも一度、家族や職場で災害について話してみてはいかがですか。
(2002年8月号より)
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ハチ刺されに注意 東和病院院長 斎藤勝彦
毎年夏になると、多くのハチに刺された患者さんが来診します。東和病院では、平成11年56人、12年84人、13年113人、今年は例年より少ない感じがしますが、7月31日現在で9人が受診しています。
ハチ毒に対してアレルギーのある人や、多数のハチに刺されると、ショックを起こして死亡することがあります。(ハチ刺症によるアナフィラキシーショックの死亡者数は、全国で毎年約40人程度といわれています。)
ハチに刺されて、全身症状(むかつき、全身のだるさ、息苦しさ、発疹、全身のしびれ、意識障害、顔色不良)が出たら、急いで治療を受ける必要があります。特に、以前ハチに刺されたことのある人に、この症状が出やすいようです。
また、刺されて30分以内に症状が出ることが多いので、その間は慎重に経過を見る必要があります。心配なら、ともかく局所を冷却しながら医療機関を受診しましょう。
スズメバチに刺されないためには、絶対に巣に近づかない、ハイキングに出かけるときには白色系の物を身につける、ハチの巣の近くで大騒ぎしないことなどが挙げられます。
(2002年9月号より)
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胃癌 花巻厚生病院 消化器科 田澤秀樹
胃癌は早期胃癌と進行胃癌に大別されます。これは癌の大きさには関係なく、癌細胞が胃壁にどれだけ浸潤したかによって分けられます。
胃癌は近年減少傾向にあるものの、悪性新生物の中でも依然として死亡率の上位を占めています。早期胃癌の5年生存率が約90%、進行胃癌は30-45%といわれており、早期胃癌のうちに発見されれば治る確率が高いのです。
胃癌には特有な症状はなく、症状から他の胃疾患との鑑別は不可能です。特に早期胃癌は無症状のことも多く、胃検診の二次検査や腹部症状を訴えてきた患者さんに胃透視(バリウムを飲んで行う検査)や胃内視鏡検査(胃カメラ)を行って偶然発見されることもよくあります。
最近ではリンパ節転移のない2cm以下の浸潤のない(あってもごくわずかの)表面隆起型の早期胃癌は開腹手術をせずに内視鏡を用いての切除もよく行われるようになりました。
癌細胞が深く浸潤すればするほど病変部の凹凸がはっきりしてきますが、早期胃癌は凹凸が少ないことが多く、内視鏡治療ができるようなごく初期の早期胃癌はほとんどの場合内視鏡検査で発見されています。
腹部症状のある方の胃の検査は内視鏡検査をおすすめいたします。
(2002年10月号より)
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インフルエンザワクチン 中舘内科クリニック 中舘一郎
今年も寒い時期に入り、渡り鳥の季節とともにインフルエンザもやってきます。最近では大きな流行もないのですが、場合によっては、かなり重症となることもあります。
インフルエンザは毎年少しずつ変化しているため、WHOを中心に、世界中のインフルエンザを調査してその年の流行ウイルス型を決めています。
ワクチンの効果が現れるまで、およそ3週間の期間が必要とされ、効果は約半年持続します。そのため流行の始まる1か月前の、11月から12月までに接種するのがよいと考えられています。以前は1か月の間隔をおいて、2回の接種を必要としていましたが、近年の研究から、1回の接種でも十分な効果が得られることがわかってきました。
ワクチンの副作用としては、注射した部位の発赤、腫脹程度で、発熱や頭痛などもほとんどみられず安全に受けられます。昨年から65歳以上の方には自治体から補助も出されることになりました。
高齢の方や慢性疾患をお持ちの方、受験期のお子さん、職業上インフルエンザにかかりたくない方(介護関係の方など)には、ワクチンの接種をおすすめします。
(2002年11月号より)
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「こころ」と「ことば」 宮内婦人科・心療内科クリニック 宮内茂壽
私には、最近気になっていることがあります。それは「○○させていただく」という表現です。講演会では著名人(ちまたでいわれている人)が、「本日お話させていただく・・・」といい、タレントは「○○と共演させていただき・・・」と、それこそ舌を噛みそうな「させていただく」の連発です。
これら「させていただく」連発症候群の患者さんたちに共通することは、本人たちはへりくだったり、または丁寧なつもりでも、「させていただく」という表現は、気付かないうちに"こころ"が貧弱になっていると考えられます。
自分の意見をはっきりと述べず、あいまいさを残すということは、主体性はもちろん、自分の言動に自信を持てない表れであるとみることができます。なぜ、「本日お話することは・・・」「○○さんと共演して・・・」ではいけないのでしょうか。日常的に何気なく使っている"ことば"の基盤に存在する"こころ"、その言葉が示す意思こそ、もっとも大切なのではないでしょうか。
用い方によっては丁寧語がいい加減語や、他人を小馬鹿にするような言葉、さらには、自信のなさを示す証明にもなりかねません。
(2002年12月号より)
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赤い痣(あざ) 三浦医院 三浦良雄
痣(あざ)には、赤いものや青いもの、黒いもの、茶色いものなどが見られます。原因は外傷性のもの(皮下出血だと2週間ほどで治ります)、血管性、メラニン色素によるものの3つに分けられます。今回は赤い痣についてお話します。
赤い痣は血管性であり、@単純性血管腫、A苺状血管腫、B海綿状血管腫の3つが、ほとんどを占めています。
単純性血管腫は、地図状にできる薄桃色で平らな痣です。成長しても色と大きさは変化しません。治療は手術で切除するか、レーザー光線治療になります。
苺状血管腫は生まれて数か月で赤い点状のものができ、それが急に大きくなり、まるで苺のような形に盛り上がります。1〜2年で増大は止まり、縮んで、たいていは6〜7歳で消えます。多くの場合は放置して様子をみますが、消えないで残ったものは切除します。
海綿状血管腫は赤黒く盛り上がったもので、生まれつきの場合と、突然現れるものとがあります。しだいに増大し、出ると消えることはありません。治療は手術による切除です。
苺状血管腫を除けば、治療は厄介です。もし、「そうかな」と思われた方は専門医の受診をお勧めします。
(2003年1月号より)
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かぜ症候群について 湯本診療所 佐藤全紀
かぜ症候群とは、ウイルスをはじめとするさまざまな病原微生物により起こる急性呼吸器(特に鼻、咽喉頭)感染症を言います。原因の80〜90%はウイルスによるものですが、時にマイコプラズマ、クラミジアなど細菌感染によっても発症します。
症状についてはよくご存知かと思いますが、病態によっておおまかに@普通感冒、A咽頭炎、B咽頭結膜熱、Cインフルエンザに分類されることが多いので、これらについて紹介します。
@については、ライノウイルス、コロナウイルスなどにより起こることが多く、鼻炎症状が主体で、時に咽頭痛、咳漱をともなうもの。Aはアデノウイルスによることが多く、時に連鎖球菌などの細菌性で、咽頭痛、発熱、全身倦怠感が主体のものです。Bはプール熱とも呼ばれるもので、夏に学童小児に好発し、発熱、咽頭炎、結膜炎を3主徴とするものです。Cについては、突然の発症、38℃を越える発熱、倦怠感などの全身症状が特徴です。
ことわざにもある通り、かぜをこじらすと合併症のもとですが、免疫力が低下する疾患や急性心膜炎など他病の初期症状の場合もあり、鑑別がたいへん重要です。
(2003年2月号より)
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非アルコール性脂肪性肝炎について 花巻温泉病院 内科 佐藤慎一郎
「脂肪肝」と診断されたことがある方は少なくないと思います。脂肪肝の方は肥満、高脂血症、糖尿病など生活習慣病を患っていることが多く、食べ過ぎや飲み過ぎを指摘されたかもしれません。
しかし、ウイルス性肝炎やアルコール性肝障害が進行して肝硬変になることがあるのに対して、脂肪肝そのものについては、進行しない病気として認識されていたように思います。
最近、脂肪肝に関連した「非アルコール性脂肪性肝炎」が注目されています。この病気の方の肝臓を組織検査すると、単に肝細胞に脂肪がついているだけでなく、炎症がおきて部分的に肝細胞が死んでいる変化が見られます。
問題なのは、一部で進行して肝硬変になる方がいることです。この病気も前述の生活習慣病をもっている方に多いのですが、まだ不明な点が多く、どのような人が単なる脂肪肝で、どのような人が非アルコール性脂肪性肝炎になるのか分かっていません。
治療法についても十分確立しているとはいえませんが、生活習慣病を合併している方はそれらの治療をしっかり行うことが重要です。飽食の時代を迎え、この病気の増加が懸念されますが、徐々にその病態も解明されていくと思います。
(2003年3月号より)
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動悸(どうき)を自覚したときには・・・
大平医院 大平和輝
「ドキドキする」「心臓が早鐘(はやがね)のように打つ」「ドカンドカンとする」「心臓が強く打つ」「ドキンとする」「心臓が一回休む」「脈が飛んでいる」「脈が乱れている」「胸がモヤモヤする」「胸が重苦しい」など、いずれの症状でも、心臓の拍動(はくどう)を不快に感じることを”動悸”といいます。
動悸の原因には、心臓神経症やうつ病、更年期障害などの心因性のものも少なくありませんが、不整脈、虚血性心疾患や弁膜症、心不全など心臓疾患による二次的なもの、貧血、脱水、甲状腺機能亢進(こうしん)症、発熱、呼吸器疾患、低血糖など、非心臓疾患による二次的な頻脈(ひんみゃく)が挙げられ、緊急の治療を要する病気も多く含まれています。
動悸のために医療機関を受診するときには、@どんなときに起こるのか(運動したとき、疲れたとき、寝ているとき、お酒を飲んだとき、心配ごとがあるときなど)、A始まり方と止まり方はどうか(突然に、徐々になど)、Bどれくらい持続するか(一瞬、数分、数時間、一日中など)、C動悸を感じているときに脈をとり「速い、遅い、乱れている、飛んでいる」などを控えておいて、医師に相談しましょう。
(2003年4月号より)
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当たり(脳卒中)を先送りする秘けつ(パートU) 元岩手労災病院 杉山浩隆
平成13年の「岩手の労働衛生」(岩手労働局刊)によれば、全産業における定期健康診断の有所見率(異常値や異常所見が指摘されされる割合)は、右肩上がりに増加を続けています。平成11年に50%を突破し、13年には55.3%に達しました。すなわち、働く人口の2人に1人は、「有所見者」という時代です。
ちなみに、だんとつ第1位は高脂血症(36.1%)、第2位は肝機能障害(20.7%)で、食生活の欧米化や、運動不足にともなう肥満などが大きく関与しているものと思われます。次いで、第3位に心電図異常(17%)、第4位に高血圧症(14%)と続いています。これら「有所見」のほとんどは、自覚症状がないため病態として実感されませんが、一定の度を越えるものは「動脈硬化(血管の老化)」を最大で約30%スピードアップする「危険因子(リスクファクター:RF)」として作用します(パートT参照)。例えば、10年間放置すると2-3年の「健康寿命」の短縮という「含み損」につながることが懸念されます。したがって、45歳から始めるRF管理が理想的です。卒中予防の決まり手は、始める決意と続ける努力。「早期着手で効果最大・・・キチンとやれば10年得する」ですね。
(2003年5月号より)
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検診を受けましょう 中舘内科クリニック 中舘一郎
行政の各種検診が始まり、一般基本検診のほか、ガン検診が行われています。読者のみなさんは受診する予定でしょうか?
昨年度、花巻市の検診で発見されたガンについて紹介します。
胃ガン6人のうち、前年も受診している人は5人で、初めて受けた人は1人だけでした。大腸ガンが発見された8人のうち、3人が進行ガンで2人は初めての受診、もう1人は三年ぶりの受診でした。ほかの5人は早期ガンで、そのうち4人は毎年検診を受けていました。毎年検診を胃、大腸とも受けている人は、早い段階で発見されており、経年的な受診が早期発見につながっています。
肺ガンは9例中、前年に異常を指摘されない症例が5例ありました。肺に関しては、年に一回の検査では不足なことも考えられます。
前立腺ガンは46例と、かなりの発見がありました。この一次スクリーニングは基本検診のときに一緒に採血をするだけです。50歳以上の男性が対象ですので、毎年受けるようにしたいものです。ガン以外にも、甲状腺の病気や大腸ポリープ、胃潰瘍(かいよう)、乳腺腫(せんしゅ)などの発見もあります。
検診は毎年受けて、早期発見を心がけましょう。
(2003年6月号より)
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訪問看護ステーション ゆうきクリニック 小木田勇輝
「訪問看護」とは、在宅で寝たきりの人、寝たきりのおそれがある人、痴呆(ちほう)の人などの健康状態・病状観察、健康相談、服薬管理、清潔の保持、食事・排せつの介助、疼痛(とうつう)緩和のケア、寝たきり・痴呆の予防のための生活支援や精神的支援、リハビリテーションなどのことです。かかりつけ医と連絡をとり、医師の指示で医療処置もできます。また、保健所や各市町村の保健婦、医療機関や介護支援事業所の職員、ケアマネージャーなどと連絡をとり、在宅療養やサービス利用の継続を支援します。
以上、訪問看護について説明しましたが、この訪問看護の事業所が訪問看護ステーションです。花巻市医師会では在宅医療の必要性を推進すべく、花巻市医師会訪問看護ステーションを平成11年10月1日に開設し、現在4年目を迎え、多くの方々に利用していただいています。
今後ますます、在宅療養の方が増加することは統計上、明らかですから、心豊かな療養を継続するために訪問看護を利用してはいかがでしょうか。
(2003年7月号より)
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当たり(脳卒中)を先送りする秘けつ(パートV) 杉山脳神経クリニック 杉山浩隆
高血圧症、耐糖能異常(糖尿病)、高脂血症に代表される「有所見」のほとんどは、痛くもかゆくもないのでついつい放置されているのが現実です。
ちなみに、60歳以下の「働く人口」でさえ6〜7人に1人が高血圧症です。すなわち高齢者を含めれば、日本人の4人に1人が高血圧症であるにもかかわらず、血圧コントロール(内服治療)の実態は「50%の法則」という通念がいまだに存在し、病院へ通う人が約半数です。そのうち中断せずに正しいコントロールを継続している人が、そのさらに半数
(全体の約25%)程度と見られます。したがって実際には半数以上の方々が放置、またはそれに近い状況と推定されます。
「有所見」=「直ちの病気」ともいえませんが、血圧では140/90mmHg以上、空腹時血糖では120mg/dl以上、高脂血症では総コレステロール値が220mg/dl以上、中性脂肪では250mg/dl以上、尿酸値では8.0mg/dl以上。身長(cm)から100を引いた数値を、体重(kg)が越えるものなどは、動脈硬化(血管の老化)を最大で30%スピードアップする「危険因子(リスクファクター:RF)」として予防的治療の対象となります。
「卒中予防の決まり手は、始める決意と続ける努力、早期着手で効果最大:きちんとやれば10年得する」ですね。(参照:平成13年11月号&平成15年5月号)
(2003年8月号より)
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みずむしの話 小瀬川皮膚科医院 小瀬川玄
みずむしは、カビの一種である白癬菌(はくせんきん)が足の皮膚の角質層に入り込んで、繁殖することで起こる病気です。
部位によって呼び名が異なり、頭部にできる「しらくも」、顔にできる「はたけ」、躯幹(くかん)や四肢(しし)の「ぜにたむし」、陰股(いんこ)部の「いんきんたむし」、手足の「みずむし」、爪にできる「つめみずむし」などがあります。
みずむしは「水虫」と書きますが、水仕事をする人に多く発生するので、水の中の虫が寄生すると考えたようです。
たむしは、その病状が堤防状のあぜ道に囲まれた田のように見え、それが虫によって作られたと考えられたようです。
みずむしには、指の間にできる趾間(しかん)型、細かい水ぶくれができる小水疱(しょうすいほう)型、角質が厚くなる角質増殖(ぞうしょく)型の3タイプがあります。
◆みずむしを治すための3大ポイント
@乾燥(白癬菌は高温多湿が好き。趾間はむれないように)
A清潔(よく洗うこと)
B根気(症状が消えたからといって治療をやめないように)
また、爪みずむしは、飲み薬で約半年で確実に治ります。みずむしは治らないのではなく、治療に時間のかかる病気ですから、早めに皮膚科専門医に相談しましょう。
(2003年9月号より)
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オーダーメイド医療について 小原クリニック 小原紀彰
人間の身体は、約60兆個の細胞からできています。その一つひとつの細胞の核には、どれも同じ遺伝子が含まれていて、研究の結果、人間の遺伝子は約32,000個と判明しています。
遺伝子を調べることで、一人ひとりの体質に応じた薬の種類や量、療法が選べるオーダーメイド医療が実現可能になりました。
政府は今年度から、約30万人分の遺伝子を集めて、がんや糖尿病、心筋梗塞(こうそく)など約40疾患を対象に、オーダーメイド医療実現化プロジェクトをスタートします。同プロジェクトには、東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターを中心に、岩手医科大学を含む全国8か所の医療機関が協力することになりました。
これによって、病気の原因の解明や、新しい診断・治療法の開発、遺伝子のわずかな個人差を調べることで、薬の効果や副作用などが、早ければ数年後には分かるようになりました。心配される個人情報の漏(ろう)えいについては、指紋認証装置などの情報保護対策を講じて、情報管理を徹底します。
オーダーメイド医療は、まさに21世紀の医療と言えます。
(2003年10月号より)
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脳ドックを知っていますか? 県立花巻厚生病院副院長 遠藤英雄
脳ドックとは、脳卒中やクモ膜下出血などが発病する前に、いろいろな検査機器を用い、病気の予防と早期発見をするための検診です。
以前は、突然倒れて救急車で運ばれるような状態になるまでわからなかった脳の病気も、現在では一大事になる前に発見し、予防的治療ができるようになりました。
自分では気付かない小さな脳梗塞(こうそく)や、脳の血管のコブ(コブが破れるとクモ膜下出血になります)も検診で発見できるようになりました。特にクモ膜下出血は、発症するときバットで殴られたような、激しい頭痛があると言われています。クモ膜下出血の原因となる未破裂脳動脈瘤(みはれつのうどうみゃくりゅう)(破れていないコブ)は脳ドック受診者の3.8%に発見されていて、手術による予防的治療を受ける方もいます。
突然の発作で倒れる前に、現在の脳の状態を知っておくことは、自分そして家族にとっても大事なことです。普段見えない場所だからこそ、大きな病気が隠れている可能性もあるのです。血縁でクモ膜下出血になった方がいる場合は、まったく関係ない方よりも、脳動脈瘤の発生率は約8〜9倍高いというデータも出ているので注意が必要です。
(2003年11月号より)
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これは知っておきましょう 大沼小児科医院 大沼一夫
◆「おたふくかぜは耳下腺の片方だけ腫れると、あとでもう片方も腫れますか?」
乳幼児は唾液(だえき)腺が未熟なので、片方しか腫れない場合もあります。一度かかれば免疫はできますが、くり返し耳下腺が腫れるのは「反復性耳下腺炎」といいます。おたふくかぜと手足口病のエンテロウイルスが、無菌性(ウイルス性)髄膜(ずいまく)炎を発症することがあります。髄膜炎は発熱、頭痛や嘔吐(おうと)の脳圧亢進(こうしん)症状を呈しますから、入院が必要です。
◆「水痘(すいとう)は軽くかかるとまた発病しますか?」
水痘は1回しか発病しません。口内炎、口角炎で知られている単純庖疹(ほうしん)は再発します。ヘルペスウイルスが神経にくっついていて、何かの刺激で同じところに水疱ができるのです。突発性発疹(ほっしん)は、ヒトヘルペスウイルスの6型と7型のウイルスで発病するので、年齢、季節に関係なく2回かかることもあります。
◆「高熱は頭に影響ありますか?」
脳炎、脳症を併発して脳障害を残さなければ影響ありません。インフルエンザ、水痘などで解熱剤としてアスピリン、ボルタレン、ポンタールなどを使用すると、脳炎、脳症を発症しやすいといわれています。アセトアミノフェン(アンヒバ坐薬、カロナール細粒など)を使用してください。
(2003年12月号より)
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腹部超音波装置(おなかの聴診器) 藤巻胃腸科内科クリニック 藤巻英二
超音波は、患者さんに苦痛を与えず、さまざまな臓器の診断に利用されています。腹部でも「おなかの聴診器」と呼ばれ、内視鏡・X線装置と同等、またはそれ以上の役割りを果たしています。
「急性腹症(ふくしょう)」と呼ばれる重篤(じゅうとく)な腹痛を起こす病気の診断では、胆石症、急性すい炎、腸閉塞(ちょうへいそく)などの消化器疾患のほか、泌尿器(ひにょうき)科の尿路結石、婦人科の卵巣腫瘍茎捻転(しゅようけいねんてん)・子宮外妊娠、循環器科の腹部大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)などで重要な情報が得られ、適切な専門科に紹介するのに役立ちます。
条件・臓器にもよりますが、5〜10mm、またはそれ以下の腫瘍を描出することが可能で、肝臓・胆のう・すい臓・腎臓・膀胱(ぼうこう)・子宮・卵巣・前立腺などの臓器で、症状が出る前に発見することができます。このほか、黄だんが出た場合、肝炎によるものか、結石や腫瘍による胆汁のつまり(閉塞性黄だん)かを即座に診断できます。(この後の治療方針がまったく違うため、非常に有力な情報です)また、腹水の有無も、比較的少量から診断できます。
検診・ドックにも適していますが、超音波は空気に弱いため胃腸の早期診断には適していません。また、脂肪も超音波を減弱させるため、肥満体の人では診断困難になります。
(2004年1月号より)
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主治医を見つけましょう 総合花巻病院 第3内科 高田恵一
最近、全国紙に病院選びについてのアンケート結果が載っていました。それによると、自分や家族が病気になって病院や医師を選ぶ場合、「友人や知人などの評判」が最も多く、次いで「自分や家族の体験」、「知り合いの医師など専門家の紹介」となっていました。
私も病院外で知り合いに聞かれることがあります。「こんな症状だけれど、どこに行けぱいい?」とか、「やっぱり総合病院がいいの?」などです。多くの方は「そんな知り合いはいない」ということがほとんどでしょう。それではどうするか。花巻市内の方であれば、近くに開業医の先生がいるはずです。きっと親身になって相談にのってくれることと思います。今の世の中、病診(病院と開業医間)・診診(開業医間)連携がしっかりしています。必要があれば必ず紹介していただけます。
また心臓についての相談も多く、「検査をしてもらいたいのだけど、大きなところでないといけないの?」-いいえそんなことはありません。花巻には循環器についても第一線級の先生が多く、特殊検査が必要な場合は、必ず紹介していただけます。ご安心ください.
とにかく困ったときに相談にのってくれる先生、しかも自分にあった先生を見つけておくことが大切です。まずは思い切って門を叩いてみてください。以外と敷居が低いことがお分かりになると思います。
(2004年3月号より)
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便秘性もしくは便秘症 熊谷内科胃腸科医院 熊谷和久
便秘の定義は何でしょうか?便秘とは「排便程度の低下、または不完全な状態」で、具体的な回数や一日の量は決まっていません。一日に一回の排便があっても、便秘症の場合もあります。排便が順調に行われない傾向があれば「便秘性」ですが、何らかの症状をともなっていれば(腹痛など)治療の対象となり、「便秘症」となります。特に慢性的な機能性便秘を常習性便秘症といいます。
さて、便通には腸内細菌が大きく関わっていて、ビフィズス菌に代表される善玉菌群と、大腸菌に代表される悪玉菌群に分けられます。善玉菌群優位で乳酸を作り、腸管内を酸性に保つことで体外からの細菌感染を予防しています。
悪玉菌群が優位になると免疫力が低下したり、発ガンの危険が増えることがわかっています。また、便秘による免疫力の低下によりアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息(ぜんそく)などのアレルギー疾患が悪化することもわかってきました。
したがって、たかが便秘とあなどることはできません。運動不足の解消や、食物繊維を摂取して、生活習慣を変えても便通が改善しない場合は医師の診察をおすすめします。
(2004年4月号より)
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緑内障から目を守ろう 白井眼科クリニック 白井淳一
緑内障とは、視神経が障害され、視力が低下したり、視野が狭くなったりする病気です。眼球内の圧力が高くなることが主な原因で、適切な治療が行われないと失明することもあります。
最近の調査によると、日本人の40歳以上の緑内障有病率は5.78パーセント、約17人に1人であり、有病率は年齢とともに増加することが判明しました。緑内障の患者は、全国で380万人におよぶと推定されています。しかし多くの場合、自覚症状がほとんどないため、治療を受けている人はそのうちの約20%で、残りの80%は治療を受けていません。一度障害された視神経を元に戻す方法はなく、最も重要なことは早期の発見と治療です。
そのためには定期的に住民検診(眼底検査を含む)を受けることが大切です。検診の結果に、緑内障の疑いと記入されていれば、受診することはもちろんですが、視神経乳頭陥凹、神経線維束欠損、乳頭出血、ノッチングと記載されていた場合も、緑内障を疑わせる所見が眼に認められるということですので、この場合も眼科で精密検査を受けることが必要です。
少なくとも年一回は定期検診を受け、大切な身体、眼を守っていきましょう。
(2004年5月号より)
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膝の「ひざを打つ」話 総合花巻病院 整形外科 佐藤正俊
立ち上がりの時や、階段の昇降時に痛みを感じる原因として、膝関節の軟骨の変形による変形性膝関節症が考えられます。膝のレントゲンを撮ると、関節の隙間が狭くなっていたり、関節周囲に骨棘(こつきょく)といって骨が飛び出していることもあります。なかには膝に水が溜まっていて、20ml位抜ける場合もあります。
一般的に言われる「水」の正体は、関節を保護するための関節液のことで、炎症によってこの関節液が関節内に溜まってしまうのです。抜くとクセになるのでは、とよくたずねられますが、これは膝に負担がかかることによって生じるもので、抜かないと関節の圧迫感がとれません。
関節の痛みが強い場合は、痛み止めの薬や湿布、関節の滑りを良くする注射をします。さらに歩けないほど痛みが強くなってしまうと、膝を人工の関節に変える手術を行うこともあります。そうならないためにも、日常生活で膝への負担を減らすよう正座を避けたり、杖を使用するなど心掛け、さらに筋力強化のための運動も良いでしょう。
1歳頃より歩き始め、それ以来ずっと今日まで負担をかけてきた膝を、これからも大事に使っていきましょう。
(2004年6月号より)
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「こころ」と「ことば」〜その2〜 宮内婦人科心療内科クリニック 宮内茂壽
今回は「〜したいと思います」についてお話します。
よくいろいろな会合や集会などで司会者が「これから〜の会を始めたいと思います」とか「〜さんのお話を聞きたいと思います」、会合の終了時には「これで〜を閉じたいと思います」などと「〜したいと思います」症候群のオンパレードが見られます。なぜ「〜を始めます」とか「お話を聞きます」ではだめなのでしょうか。後段の表現方法の方がより簡明でありましょう。
最近特にこの「〜したいと思います」を使う人が増えていることに気付きます。多少いじわるな見方をすれば、「〜を始めたいと思います」に対し、「思うだけでなく、早く始めろよ」とか「お話を聞きたいと思います」には「思うだけで、本当は聞きたくないのでは?」と考えることもできます。
「〜したいと思います」という表現には、自分(自己)を一段低くして外部からの抵抗や批判をあらかじめ少なくしておこうという意識が作用している気がします。
いまの世の中、何事にもはっきりと自分の意思、態度を表明せず、暖昧な部分を残しておく方が、自己責任を求められたとき、うまく立ち回れる余裕(一種の逃げ)があると考えているからでしょうか。
(2004年7月号より)
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傷痕(きずあと)について 三浦医院 三浦良雄
ケガして、一番気になることは「傷痕(きずあと)」が残るか、ということではないでしょうか。傷痕は専門用語で「瘢痕(はんこん)」といいます。
切れた部分は、線維組織(せんいそしき)というものができて治っていきます。その線維組織が瘢痕となるわけですが、一回できたこの瘢痕は、完全になくなりません。しかし治療の方法で目立たなくできます。
切り傷は大きく分けると「切創(せっそう)」と「挫創(ざそう)」に分けられます。「切創」とは鋭い刃物等で切った傷で、傷の縁は整い線状で、ややきれいに治ります。「挫創」は、強い打撃などで皮膚が離断された傷です。傷の縁は不規則で、切れた内面は不整で血行が悪く、切創にくらべて治りが悪くなります。きれいに治すには、傷の部分を切りなおして、傷の縁を縫います。
また皺(しわ)に沿った傷は、比較的目立たなく治ります。しかし皮膚の一部が欠損したりしても、傷痕が残ります。皮膚の内側にある真皮で内縫い(真皮縫合)をして、表面を閉じてから外を縫い、きれいに治します。このように治す方法はありますが、一番傷痕が残ってしまうのが感染によるものです。
傷を負ったら、まず流水で傷とその周りをきれいにし、病院に行きましょう。
(2004年8月号より)
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熱中症 湯本診療所 佐藤全紀
気象庁刊行の「二十世紀の日本の気候」によると、この百年間で日本の年平均気温は約1度上昇したそうです。熱中症にさらされる危険が増していると言えます。
さて、高温による人体の障害(熱中症)には比較的程度の軽いものから、@熱けいれんA熱疲労B熱射病などがあります。@はふくらはぎ、肩、腹筋などに有痛性の発作的な筋の収縮が運動中や終了後に生ずるものです。発汗をともなう労作時に、水分だけ補給すると起こりやすくなります。Aは塩分と水分両方の喪失によるもので、めまいや疲労感、吐き気、頭痛などが生じますが、意識は清明で、熱射病ほど体温は高くないものです。Bは深部体温(口腔・直腸などの体温)が40.5度以上、意識障害、発汗の停止が特徴に挙げられます。意識障害は運動失調、被刺激性(ひしげきせい)、幻覚など多様で最も致命的な病態です。
いずれの場合も高温環境から遠ざけ、涼しい場所に寝かせ、体に水をかけて風を送り冷却することが基本的な処置になります。@は食塩水またはミネラル飲料の補給で多くは軽快しますが、AとBの場合は医療機関の受診が必要で、特にBの場合は緊急を要します。
「心頭を減却すれば火もまた涼ことわざし」の諺もありますが、高温環境(昼夜を問わず)では体調の変化にいち早く気づき、対処することが最も大切です。
(2004年9月号より)
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C型肝炎と鉄 岩手医大付属花巻温泉病院 内科 佐藤慎一郎
鉄は血液中の赤血球の材料で、鉄不足で貧血になることはご存知のことと思います。不足に備えて鉄は肝臓に蓄えられています。
C型肝炎の人は、この貯蓄分の鉄が必要以上に多くなっていて、その過剰な鉄が肝細胞を傷害する一つの原因となっていることがわかってきました。このためC型肝炎の治療として血液を抜く「瀉血(しゃけつ)療法」という治療が行われるようになってきています。血液を抜くと新しい赤血球が必要になり、肝臓中の鉄が使われて減るからです。具体的には一度に200〜400mlの血液を献血と同じような要領で採り、これを肝臓の鉄が少なくなるまで二週間に一度のペースで繰り返し行います。瀉血療法でC型肝炎を完治させることはできませんが、多くの人の肝機能数値が改善しています。
食べ物から摂る鉄も少なめにしたほうが良いと思います。レバー、ひじき、ほうれん草などが鉄の多い食品ですが、そのほかにも鉄を含む食物は数多くあります。鉄を含む食物を全く食べないのは無理ですし、その必要もありません。ただし、C型肝炎の人が鉄を多く摂ろうとすることは間違いです。鉄は体に必要不可欠ですが、C型肝炎の方にとっては必要最低限の量で良いということです。
(2004年10月号より)
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本当は怖い心臓の風邪〜心筋炎〜 循環器科・内科 大平医院 大平和輝
心筋炎は心臓の筋肉(心筋)がウイルスや細菌、アレルギーなどによって急性の炎症を起こす病気です。多くはよくある「風邪ウイルス」によるものであり、はじめの症状も発熱、咳、頭痛、咽頭痛、倦怠感、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢などのいわゆる「風邪症状」です。その後に胸痛、息切れ、呼吸困難、むくみ、ふらつき、動悸、頻脈、不整脈、低血圧、失神などの心臓の症状が現れますが、普通の風邪と自己診断する場合も少なくありません。
症状のほとんどない例もありますが、心不全や不整脈によって命を落とす場合もあり、心筋炎と診断された場合は入院治療が必要です。最重要型(劇症型心筋炎)では薬物治療が無効の場合が多く、そのような場合は人工心臓補助装置やペースメーカーなどの高度な治療のできる専門施設でないと救命できません。
普通の総合感冒薬や解熱剤の成分である非ステロイド系抗炎症薬は、心筋炎の急性期に使用すると、心筋破壊を増悪させる可能性があるので使用してはいけません。
「風邪症状」に前述の症状が加われば心筋炎を念頭に置き、自己判断で薬を服用せずに、すぐに心臓の専門医を受診することが肝要です。子どもや老人など抵抗力の弱い例ではなおさら注意が必要です。
(2004年11月号より)
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「頭痛と上手に付き合う秘訣」杉山脳神経クリニック 杉山浩隆
頭痛は、およそ一割以上の方々が経験する日常的な疾患です。その内訳は、@緊張型頭痛(肩こり、ストレス、天気などに影響されるジワーッとした頭重感、A片頭痛(視野異常の前兆をともなうことがあり、急にズキズキ・ガンガンと激しく痛む。多くは2〜3時間で軽快・消失)、B群発性頭痛(片頭痛のような激しい痛みが、おもに夜間に集中して一か月に何回も生じる)に分類されます。大多数を占めるのが@です。Bは極めてまれと言われています。
いずれの頭痛も、命に関わる心配な疾患ではない代わりに、一生涯のお付き合いが必要となります。お付き合いのコツは痛みから来る不必要な不安・心配(脳卒中になるのでは?頭の中に腫瘍でもできたのでは?・・・などなど)を除外することです。すなわち、頭の中身(脳や脳血管)には異常がないことを確認することで不安・妄想が消失するという構図です。その後に安心して症状(痛み)と付き合えば良いのです。
医療技術の進歩した今日では、MRA検査(強力な磁石の釜)によって日常的に脳血管の異常の有無をチェックすることが可能になりました。(所要時間は20分〜30分。保険診療3割負担の場合は約8000円前後)
(2004年12月号より)
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「肝臓に休息を」 中舘内科クリニック 中舘一郎
年末年始、嫌でもお酒と付き合うことの多い季節です。楽しく食べながら適量を飲む。これはむしろ長寿につながるものとも思えます。しかし、毎日惰性で多量に摂取するのはやはり良くないことです。良くないとわかっていても仕事や付き合いなど、なかなか断れないのも本当です。
肝臓や心臓、腎臓などは一生涯休むことなく働き続けます。その大切な臓器に休息を与える方法は何でしょうか。心臓であれば、激しい運動を避けて静かに過ごすということになるでしょう。肝臓はさまざまな働きを持っていますが、お酒に関して言えば、やはりお酒を控えることが一番です。一回の量を少なくする、休む日を作る、食べすぎを控えるなどでしょう。ウコンなどもお酒の肝障害に良いとされていますが、解毒剤ではありません。ほかにはビタミンを摂取すること、十分な睡眠をとることなどがあげられます。
肝臓はへばっても痛みなどの悲鳴をあげることはありません。無症状でいることが多いのです。よほどひどい状態になってから初めて、だるさや黄疸などの症状が出現しますが、そうなってからでは手遅れです。
「仕事の後の自分へのご褒美」。よくわかりますが、上手に飲んで、長く楽しくお酒と付き合っていただきたいものです。
(2005年1月号より)
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「(心的)外傷後ストレス障害」 ゆうきクリニック 小木田勇輝
最近、頻回に新聞やテレビなどで取り上げられている診断名「(心的)外傷後ストレス障害(post-traumatic stress disorder)は次のように解釈されています。
『ほとんどの人に大きな苦悩をもたらすような、例外的で著しく脅威的、あるいは破局的な性格を持ったストレスの多い出来事や状況(例えば自然災害、人工災害、重大事故、テロ、変死の目撃など)に対する遅延または遷延した反応』
すなわち、体験した大きなストレスから回避しているにもかかわらず、生じてしまう侵入的回想(フラッシュバック)または夢の中で反復して、外傷を再体験してしまうことなどです。それに対する反応として恐怖、パニック、攻撃性などが急激に表れることがあり、付随して不安や抑うつ気分、不眠が認められ、自殺念慮が見られることも稀(まれ)ではありません。
外傷後、数週間から数か月の潜伏期間(6か月を超えることは稀)を経て発症することが多く、しかし大半の方は回復することが可能です。
以上簡単に概要を述べましたが、もし当てはまりそうな方がいらっしゃる場合は、専門医(精神科医)の受診をお勧めします。
(2005年2月号より)
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再び、前立腺がんについて 小原クリニック 小原紀彰
花巻地方(4市町)では、50歳以上の男性を対象に、前立腺がん検診(血液検査 PSA)を実施しています。
数年の結果を見ますと、およそ16,200人が受診し、うち前立腺がんの確定は110人で、発見率は0.67%でした。これはほかのがん(胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮がん)に比べ、10倍の数字です。対象者のうち前立腺がん検診受診者は半分程度にとどまっており、まだまだ発見されていない方が多いと思われます。特に70歳未満の方には強く受診をお勧めします。
朗報があり、岩手医大では東北地方で初めて「小線源療法」を導入しました。小線源療法は、弱い放射線を出す小さなカプセル状の線源を、細い針の付いた挿入器具で前立腺内に約60〜80個埋め込み、がん病巣に放射線を照射します。ただ、この治療法を受けるには@前立腺内に限られる初期がん、A原則として60歳以上、B大きな前立腺肥大がない、C前立腺手術を受けていないなど、症状や年齢に制限があります。
初期の方は切らなくて済む事になりました。これを機会に検診を受けてみて下さい。
(2005年3月号より)
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「床ずれ」 小瀬川皮膚科医院 小瀬川 玄
寝たきりの人の皮膚の同じ場所に2時間以上も圧迫が持続的に加わると、血液から酸素や栄養素が供給されなくなり、皮膚が死んでしまって床ずれができます。
一般に骨の出っ張った場所に出来やすく、特に仙骨部(おしりの真ん中の硬い部分)が最も多く、次いで腰骨の出っ張った部分に出来る傾向があります。寝たきりの高齢者に多く、貧血など栄養状態が悪い人、全身状態が悪い人が床ずれになりやすいです。
床ずれを早く見つけるには、看護や介護に携わる人が、体位変換やオムツ交換などのたびに、骨の突出した部分に赤みがないかどうかをチェックする必要があります。体位変換をしても赤みが消えないのなら床ずれです。
予防で最も大切なことは、寝たきりを防ぐことです。長時間の仰向けの姿勢を避け、就寝時間以外は立位・座位で生活することが基本です。また入浴は末梢の循環を改善するため、床ずれの予防に大きな働きをします。体位変換も2時間ごとに行うことが原則です。さらに局所の圧迫防止のために、床ずれ防止マットなどの寝具の活用も重要です。
浅い床ずれの場合は、ヤケドの治療と同様に軟膏療法で治りますが、深い床ずれは治りにくいので、早めに皮膚科専門医にご相談ください。
(2005年4月号より)
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地域医療連携と「かかりつけ医」 県立花巻厚生病院副院長 遠藤英雄
3年後の平成20年には、県立花巻厚生病院と県立北上病院が合併し、北上市村崎野に病院が移転します。今までより距離が遠くなるため、地域医療連携(病診連携)重視の病院になりますので、新病院の概略についてご紹介します。
@手術、がん治療、緩和医療など専門的、高度先進的医療の提供。A脳卒中、心臓病などの救急患者を24時間受け入れる。B急性期治療が主で、急性期入院の治療後、慢性期受け入れ施設に移る。C外来予約診療制となり、紹介状なく突然来院しても待たされたり、十分な検査ができないことがある。D慢性投薬患者さんは、地元の「かかりつけ医」から投薬を受ける。E慢性期通院患者さんに新たな症状が出現した時は、「かかりつけ医」を受診し、その後紹介状を持参して新病院を受診する。ただし、夜間の急患はこの限りではない。
すなわち、地域医療連携とは新病院と地域の「かかりつけ医」が連携・協力し、一人の患者さんに対して、責任を持って地域で医療を行うことです。住民のみなさまは、当初不便を感じると思いますが、早くこのシステムに慣れるため、今から近所に「かかりつけ医」を見つけましょう。そうすると将来病気になっても安心です。
(2005年5月号より)
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『予防接種について」大沼小児科医院 大沼一夫
ワクチンには次の3種類があります。@生ワクチン・・・生きた病原体を弱めて接種して、免疫(抗体)を作る。ポリオ、麻疹、風疹、BCG、おたふくかぜ、水痘ワクチンなど。A不活化ワクチン・・・免疫を作るのに必要な成分のみを取り出し、可能な限り毒性をなくし、何回か接種して免疫を作る。三種混合(DPT)、日本脳炎、インフルエンザ、A型肝炎、B型肝炎、肺炎球菌、狂犬病ワクチンなど。Bトキソイド・・・細菌が産出する毒素だけを取り出し、毒性を弱めて何回か接種して免疫を作る。二種混合(ジフテリア・破傷風混合:DT)トキソイド、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイドなど。
生ワクチンを接種した場合はその後、次のワクチン接種まで4週間以上あける必要があります。不活化ワクチン、トキソイド接種後は次のワクチンまで1週間以上あけます。同じワクチンを何回か接種する場合はそれぞれ定められた期間を守って接種して下さい。
麻疹、風疹、おたふくかぜに罹患したら約4週間経過してから接種して下さい。本年からBCGは生後3-5か月の間にツベルクリン反応なしで接種することになりました。
(2005年6月号より)
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非常に多い病気「逆流性食道炎」藤巻胃腸科内科クリニック 藤巻英二
「逆流性食道炎」は、働き過ぎて腰の曲がってしまった高齢女性に多い病気です。草取りなどの前かがみの仕事や、食べ過ぎた時に胸やけがあれば、この病気と考えて良いでしょう。胃の上部が横隔膜を超えて胸まで上がり、食道との境界のしまりが悪くなり、胃酸が食道に逆流するために起こります。バリウムによる胃透視検査では、食道の炎症や潰瘍を写し出すないことは難しく、正確な診断には内視鏡検査が必要です(高齢の方には胃透視より内視鏡の方がはるかに楽なはずです)。予防は腰が曲がらないように、骨そしょう症対策が大切です(「骨そしょう症はこわくない」の項参照)。腰痛バンドのしめすぎも原因になりますので、動かない時は緩めるようにしましよう。
男性では食べ過ぎ・飲み過ぎでお腹の出た人に本症が多く、一種の生活習慣病ですので、ダイエットに努めるべきです。
いずれにしても現在は、非常に切れの良い薬が開発されていますので、早めに胃腸科の医師に相談して下さい。我慢しすぎると、出血のため貧血を起こしたり、食道が狭くなることがあります。
(2005年7月号より)
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最新白内障手術 花巻中央眼科 高橋和博
白内障は、ひとの眼をカメラに例えれば、もともとは透明なはずのレンズがだんだん濁ってくる病気です。年を取ると誰でも白内障になりますが、糖尿病をはじめ色々な病気が原因でなることもあります。目薬には濁ったレンズを透明にする効果はないので、濁りの程度が進んでしまうと、手術で濁りを取り除く以外に白内障を治療することはできません。
ここ数年、白内障手術は飛躍的に進歩しました。特に手術にかかる時間が平均15分程度まで短縮されたことは、患者さんにかかる肉体的、精神的負担を軽くする効果をもたらしています。さらに最新の白内障手術では、患者さんが白内障になる前から持っている近視や遠視、あるいは乱視といった視力を低下させる原因(これらを総称して「屈折異常」と呼びます)も治療することができるようになりました。例えば、若いころから近視や乱視で眼鏡やコンタクトレンズを使い続けてきた患者さんが年をとって白内障の手術を受けると、白内障と一緒に近視や乱視も取り除くことができるようになりました。(ただし老眼鏡は必要です)
屈折異常を取り除く手術は「屈折矯正手術」と呼ばれますが、濁りを取り除くと同時に屈折矯正手術も行う最新白内障手術の視力改善度は、以前にもまして良好になっています。
(2005年8月号より)
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在宅医療の勧め 総合花巻病院 第3内科 高田恵一
花巻地方の医療は、労災病院撤退や県立病院統合など、これからどんどん変わっていくと考えられます。これは全国的な傾向で、花巻に限ったことではありません。病院が減り、ベッド数も減り、急性期の医療を担う大きな病院は急患や重症の患者さんで手いっぱいとなり、入院期間は短縮を余儀なくされます。ちょっと具合が悪いとか、食べられないという高齢者の方が簡単に入院できない状況になっていきます。さらには食べられない方が経管栄養や胃ろうを造設した場合でも、長期の入院ができなくなり、早晩自宅に戻ることが要求され、在宅医療が増えていくことになります。
このような状況を考えると今後、高齢の方はいざという時の対応も含めて、かかりつけ医を持つことが大切です。普段は医者にかかることもなく、よくわからないという方は市役所や介護支援事業所、訪問看護ステーションなどに相談してみるのもよいでしょう。
軽い状況では入院せずに、訪問看護などを利用して重症にならないように診ていくことが大切になります。面倒くさがらずに医療機関や看護、介護の施設などの医療連携を上手に利用しましょう。
(2005年9月号より)
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肺炎予防のために肺炎球菌ワクチン 熊谷内科胃腸科医院 熊谷和久
肺炎球菌ワクチンをご存知でしょうか。肺炎球菌は気管支炎・肺炎などの呼吸器疾患や髄膜炎を起こす細菌です。このワクチンを接種することで肺炎に罹患する可能性を低下させたり万が一、肺炎を患っても軽い症状で済む効果が期待できます。
日本のおもな死亡原因の年次推移を見ると、肺炎による死亡者数は「悪性疾患」「心疾患」「脳血管疾患」のいわゆる三大死因につぐ第4位となっています。日常における肺炎の原因として肺炎球菌が3割強を占めており、最近は抗生剤の効きにくい肺炎球菌が増えています。その分離割合は30〜50%といわれ、いかに肺炎球菌による感染を予防するかが問題となります。ある海外のデータでは、インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンを併用接種したことで、慢性肺疾患を有する高齢者の入院リスクを63%、死亡リスクを81%低下させることが出来たとの報告もあります。
肺炎球菌ワクチンは、季節に関係なく接種可能です。65歳以上の高齢者、慢性の呼吸器・心・腎・肝臓疾患をお持ちの方、糖尿病の方は積極的に肺炎球菌のワクチン接種をお勧めします。接種は自費となります。くわしくはかかりつけ医にご相談ください。
(2005年10月号より)
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加齢黄斑変性 白井眼科クリニック 白井淳一
日本においては急激な高齢化に伴い、加齢による病気も増加しています。目の病気としては白内障や緑内障、加齢黄斑変性などが代表的なものです。加齢黄斑変性は欧米では、成人の失明原因の第一位を占める疾患ですが、一般にはまだ良く知られていません。
この病気は、網膜(カメラに例えるとフィルムに相当)の中心部にあたる黄斑(視力をつかさどる細胞が集中している場所で、物の形、色、大きさなどの情報を識別)が加齢により障害される病気です。滲出(しんしゅつ)型(新生血管有り)、萎縮型(新生血管なし)の2型に分類されます。症状としては視力が下がったり、見る物の中心部が黒っぽく見えたり、物がゆがんで見えます。進行すると視力が0.1以下にまで下がり、両目に起こることもあり、日常生活に不自由を感じることになります。
治療は止血剤、ビタミン剤などの内服、レーザー光凝固術、光線力学療法などがありますが、十分な治療法はありません。加齢による病気なので予防はできません。早期発見が大事ですので、ときどき自分で片目をかくし、ぼやけて見えたり、ゆがんで見えたりしないかチェックしてみてください。
(2005年11月号より)
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乳房検診について 総合花巻病院 外科 橋本 有
近年、日本でも生活習慣の欧米化に伴い乳がんの罹患率が上昇しており、40歳代後半と60歳代前半に罹患年齢のピークがあります。また、90歳になるまでに8人に1人の女性が乳がんに罹患するといわれています。
乳がんの危険因子として@30歳以上で未婚、A30歳以上での初産、B11歳以下での早い初潮、C55歳以上での遅い閉経、D標準体重の+20%以上の肥満、E良性乳腺疾患の既往歴、F乳がんの家族歴などが指摘されています。
乳がん検診にマンモグラフィーを導入することによって、触診では触知されない早期乳がんの診断率が上がり、死亡率の減少に効果があることが明らかになりました。平成16年4月に厚生労働省が「40歳以上の女性は2年に1回のマンモグラフィー併用検診の受診」を提唱しています。
当花巻地区での乳がん検診率は、まだ20%程度に止まっています。すなわち、5人中4人の女性は乳がんを早期に発見できる機会を自ら失っているといえます。
乳がんから自分の命を守るためには、日ごろから乳房の自己触診を行い、定期的な乳がん検診を受けることをお勧めします。
(2005年12月号より)
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体の強度問題 総合花巻病院 整形外科 佐藤正俊
いま世間を騒がせているマンションの構造計画書偽装問題は、大変深刻な事件ですが、これは他人事ではありません。住まいも大事ですが、もっと大事な自分自身の体の強度にも、関心を持たなければなりません。
骨粗鬆症は、骨の量が減ってもろくなり、骨折しやすくなる病気です。骨は絶えず古い部分を壊し、新しい骨を作ってリフォームしています。骨を壊す量が、作る量を上回ると骨粗鬆症になります。特に女性は、女性ホルモンが減少する閉経を境に急激に減少するのが一般的です。問題は骨がもろくなると、背骨や大腿骨の骨折を生じやすくなり、寝たきりの原因になります。
検査にはおもに整形外科外来で行っている腰のレントゲンによる骨密度測定などがあります。平均で若い人より、20%以上骨密度が低下すると、骨粗鬆症となります。予防と治療としては、骨のもととなるカルシウムやビタミンDを含んだ魚や牛乳の摂取を心がけ、カルシウムを骨に蓄えるために適切な運動をお勧めします。また、骨を壊す細胞の働きを弱める薬なども使用されています。
いま一度、ご自身の体の強度を測定して、自分自身の体の構造計画書を作成してみてはいかがでしょう。
(2006年1月号より)
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見えない骨折 岩手医大花巻温泉病院 病院長 猪又義男
骨粗鬆症は、平均寿命がのびるにつれて増え続けている高齢化社会における代表的疾患のひとつです。骨粗鬆症になると背中や腰の痛みがあり、痛みのために歩くことさえ困難なことがあります。背骨の骨折が多発すると背中が丸くなり、前かがみの姿勢で歩いたり、腹筋、背筋が萎縮して動作が緩慢になり、転倒しやすくなります。X線写真を見れば骨粗鬆の程度を判断することが出来まずし、骨折の有無も分かります。
しかし、骨粗鬆症の方では骨折があるにもかかわらず、X線では骨折が全く分からないこともあるのです。一番多いのは背中や腰の骨ですが、最も危険なのが股関節の大腿骨頚部不顕性骨折といわれる疾患です。痛みがあるのにX線では骨折がない、骨折がないから痛み止めや安静にして様子を見ましょう、ということになります。そのうち骨がずれてきてX線で初めて骨折が見つかった時には、大きな手術をしなければなりません。ずれのないうちに発見され、適切な手術がなされれば手術の翌日から歩くことも出来ます。MRIによる早期診断、早期手術がこの病気の予後、ひいては生命予後を左右するといっても過言ではないのです。
(2006年2月号より)
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バカは風邪をひかない? 中舘内科クリニック 中舘一郎
人は一年間に平均で5〜6回風邪をひくそうです。バカも利口も関係ありませんが、ストレスがなく、ゆったりと暮らしている人の方が風邪にかかりにくいかもしれません。
風邪はウイルスによる病気です。いま流行っているインフルエンザ以外の風邪に特効薬はありません。抗生物質が効くはずもなく、治療の基本は安静と保温、栄養補給です。高い熱はそれ自体がウイルスの活動性を抑えるのに効果があります。そのため最近では「やたらと熱を下げるのはよくない」とさえ言われています。それでも仕事を休めない現代人。風邪に対する薬(解熱薬、鎮咳剤、抗ヒスタミン剤など)を飲み、仕事に出掛けなくてはならないのでしょうが、病院から処方される薬でも過剰な期待は禁物です。
風邪がなかなか治らないという方、無理をしていませんか?風邪をひいた後の喉の粘膜はバリヤーの働きも低下しているので、別のカゼウイルスが取りつく確率も高くなります。良くなるまで体を大切にしましょう。
でも、風邪をひかないのが一番です。予防にはうがい、手洗い、水分補給、栄養、睡眠、リラックス、保温、保湿が大切です。春はもうすぐ。頑張りましょう。
(2006年3月号より)
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低温熱傷 三浦医院 三浦良雄
一年中を通して火傷(医療では熱傷といいます)はありますが、家庭での火傷は、お湯をこぼした、ストーブに触ってしまった、など原因もいろいろあります。
しかし、なんといってもやっかいなのが冬に使用する「あんか」「湯たんぽ」で受傷するいわゆる低温熱傷です。普段、短時間の接触では何も問題とならない程度の温度で、長時間にわたって接触部に作用する熱によって、深い皮膚損傷となるもので、低い作用温度でも作用時間が長くなればなるほど深い熱傷となります。人間の皮膚組織では45℃の温度で4-5時間。50℃では15分で傷害となります。低温熱傷の範囲は非常に小さいことが多いのですが、深い火傷になります。火傷の重症度は、T度(皮膚浅層まで)、U度(皮膚浅層以上)、V度(皮膚を越えるもの)と3つに分かれます。低温熱傷の多くはV度となり、治療期間がとても長くかかってしまいます。
湯たんぽ、あんかを使うときは、わくわくし、暖かい布団に入るのがとても楽しみなものですが、使用するときはお湯などの温度、湯たんぽを包むタオルなどの量を加減し、くれぐれも低温熱傷を起こさないようにご注意下さい。もし受傷したら、小さいからと放っておかず、必ず近くの病院に行きましょう。
(2006年4月号より)
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花巻市の子宮癌検診について 宮内婦人科心療内科クリニック 宮内茂壽
今年度も花巻市が実施する、子宮癌検診が始まります。今年から@これまで毎年実施となっていた対象者が、隔年(1年おき)になったこと、A対象者の年齢が30歳以上から20歳以上に引き下げられたことが大きな変更点です。
ここ数年間の数字から、旧花巻市の子宮癌検診受診率は、対象人数の25%前後で推移していて、4人に1人しか受けていないのが実情です。しかし年間455名の方が子宮癌で亡くなっており、この方たちのほとんどは子宮癌検診未実施の方です。前述の通り、本年からは受診者の生年月日により、奇数年生まれ、偶数年生まれでその年の受診者が振り分けられます。ただし1〜3月生まれの、いわゆる早生まれの方は、学校の学年と同じ前年生まれとみなします。例えば昭和35年の早生まれの方は、昭和34年生まれの方と同じという訳です。Aに関しては子宮癌(正確には子宮の出口にできる子宮頚部癌)にかかる年齢層が年々若年化しており、10代の患者も珍しくない時代となり、そのための変更です。
子宮体部癌(子宮の奥の部分の癌)の年齢層も同じく低下してきてはおりますが、こちらは集団検診では無理があり、各人が医療機関を個別に受診するしか今のところは無いようです。
(2006年5月号より)
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白衣高血圧と仮面高血圧 湯本診療所 佐藤全紀
高血圧症の分類のうち、最近良く耳にする言葉に白衣高血圧や仮面高血圧といったものがあります。白衣高血圧とは、未治療の方のうち医療環境(主に外来)で測定した血圧は常に高血圧で、非医療環境で測定した血圧(家庭血圧)は常に正常であるものを言います。
一方、仮面高血圧(逆白衣高血圧と言ったりもします)は白衣高血圧とは反対に、外来等で測定した血圧は正常で、非医療環境で測定した血圧は高血圧状態にあるものを言います。外来では高血圧の状態が遮蔽(マスク)されているのでこう呼ばれるのです。
白衣高血圧は、医師や看護師(白衣を着た人)の前で測定した際には自然と緊張して血圧が高くなりますが、通常は治療を必要としません。それに対し仮面高血圧の中には早朝のみ血圧が高い早朝高血圧(早朝覚醒後、急に血圧上昇するものと夜間に血圧が低下せず、高いまま経過するものがあります)の場合や、仕事のストレスで職場でのみ血圧が高い場合なども含まれており、治療を要することが多いのです。
いずれの場合でも家庭血圧を測定することが鍵となってきますので、朝食前(加えて就寝前)の血圧測定が重要で、家庭血圧135/85oHg以上の時は医師に相談するのがベターです。
(2006年6月号より)
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ウイルス肝炎の最近の治療 岩手医大花巻温泉病院 内科 佐藤慎一郎
ウイルス性肝炎にはB型肝炎、C型肝炎があり、どちらもウイルスの感染でおきる病気です。最近ではウイルスを減らしたり、消したりして病気を良くする治療が進歩しています。
B型肝炎には数年前から、ラミブジンというウイルスを減らす内服薬が使われています。多くの人に効果がありますが、完全にウイルスを消すことはできないため、長期間飲み続ける必要があります。困るのはその間に体内のウイルスが変異して、薬が効きにくくなることでした。最近、このような時に使うアデホビルという薬が出来たので治療がしやすくなりました。
C型肝炎の治療薬として、以前からインターフェロンがあります。これは注射薬で週に3回程度病院に通わなければなりませんでしたが、今は週に1回の注射でよいインターフェロンがあります。通院が少なくてすむだけでなく、発熱などの副作用も従来より軽くなり、さらに治療効果も以前に比べ大分高くなっています。ウイルス量の多い方でも1年使うと、50%の確率でウイルスを消すことができます。
また、瀉血療法がC型肝炎の治療として認められ、治療の選択肢が増えました。ウイルスを消す効果はありませんが、肝機能を落ち着けることができます。
(2006年7月号より)
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